まだスマートフォンもSNSもなかった時代。インターネットで見知らぬ異性と知り合うことは、今以上に刺激的で、どこか怪しげな行為だった。
特に1990年代末から2000年代にかけて、携帯電話の普及とともに爆発的に増えたのが「出会い系サイト」である。
なかでも「スタービーチ」は、当時のガラケー世代なら一度は名前を聞いたことがあるかもしれない。
しかし、出会い系サイトの歴史はスタービーチだけではない。携帯電話会社の公式メニューに出会いサービスが掲載されていた時代もあれば、事件の多発によって「出会い」という言葉そのものが敬遠された時代もあった。今回は、そんな日本の出会い系サイトの歴史を振り返ってみたい。
出会い系サイトの始まりは1990年代のインターネット黎明期
日本でインターネットが一般家庭にも広がり始めた1990年代半ば。まだ接続にはパソコンと電話回線が必要で、インターネットを使うこと自体が一部の人の趣味だった時代である。
それでも、ネットを通じて誰かと知り合いたいという需要はすでに存在していた。
当時の主な交流手段は、電子掲示板やチャット、電子メール。個人サイトの掲示板で知り合い、メールアドレスを交換して交流するような文化が生まれていた。
1996年にはすでにネットのお見合いサイトが存在
日本の初期の出会いサービスとして知られるのが「あっちゃんLove2お見合い」である。
1996年5月に個人サイトとして開設され、インターネットを使った恋人探しや結婚相手探しの場を提供していた。
同サイトは後に「acchan.comラブラブお見合い」となり、2001年にはiモード、J-PHONE、EZwebへ順次対応している。
現在のマッチングアプリよりもはるかに早い時期から、ネット上でプロフィールを公開し、希望する相手を探すという仕組みが成立していたわけだ。
参考:acchan.comの沿革
ちなみにこちらのあっちゃんLove2お見合いは「acchan.com恋愛お見合い」と名前を変え2026年9月29日15時までサービスを続けていた。
HPを見て上記日付が表示されていた時には正直驚いた、本当につい最近までサービスが続いていたのだから。
そしてこの記事を作るまで私はこのサイトの存在すら知らなかったのだけれど、このタイミングで記事にしてサイトを知ることになるとは…これもある種虫の知らせのような物だろうか?
1999年、iモードの登場で出会い系サイトが身近になる
1999年2月22日、NTTドコモが「iモード」のサービスを開始した。
それまでパソコンからの利用が中心だったインターネットを、携帯電話から気軽に使えるようになったことは大きな変化だった。
続いてEZwebやJ-PHONEのJ-スカイといった携帯インターネットサービスも広がり、ネットは自宅のパソコンからアクセスするものではなく、いつでも持ち歩けるものになっていく。
当然、出会いを求める人たちも携帯電話へと移っていった。
自宅でパソコンを立ち上げなくても、学校や職場からの帰り道、あるいは夜中に布団へ潜り込みながら、知らない誰かとメールを交換できるようになったのである。
携帯電話会社の公式メニューに出会い系サイトがあった時代

今では信じられないかもしれないが、携帯インターネットが普及し始めた当初、携帯電話会社の公式メニューから利用できる出会いサービスが実際に存在していた。
しかも、聞いたことのない怪しい業者ばかりではない。大手企業が運営するサービスもあった。
J-PHONE公式サービス「エキサイト 出会い」
1999年12月、検索エンジンなどで知られるエキサイトが、J-PHONEのJ-スカイ向けに「エキサイト 出会い」を開始した。
利用者がプロフィールを登録し、地域や年齢などの条件から友達や恋人を検索するサービスだった。
相手との相性を確認したり、100文字までのミニメールを送ったりできる仕組みも用意されていた。
2002年のINTERNET Watchの記事でも、同サービスが1999年12月にJ-PHONEの公式サービスとして始まったことが紹介されている。
1999年12月の発表では、当初無料で提供し、翌2000年2月から月額300円の有料サービスに移行する予定とされていた。
参考:ASCII.jp(1999年12月9日)エキサイトの出会い検索サービス
ちなみに管理人は当時J-PHONEユーザーだったので、実際に「エキサイト出会い」を利用したことがある。
少なくとも管理人が利用していた2000年頃は、後述するサクラのような悪質な仕組みを感じることもなく、普通に出会えるサービスだった。
J-PHONE版は月額300円で、男女ともに料金が必要だったと記憶している。
とはいえ、利用者は男性の方が多かった印象で、女性と出会うには多少の競争を勝ち抜く必要があった。それでも、実際に何人かの女性と会うことができた。
しかも年齢制限が緩かったのもあり、出会った子のなかにはLJKだった子も居た。
LJK
それだけ聞くとみんなの脳内には物凄く色々な想像と妄想が沸き立つ事だろう。
しかし、駅で待ち合わせをして相手の姿を見た瞬間、正直に思ったのは
髪型も服装もダサ。
田舎のおばちゃんみたいな風貌と体形だな。
世間が想像するようなLJKとは、ずいぶんかけ離れた女の子だったことは正直にお伝えしておこう。
当時はイベサー全盛期、渋谷にいるようなギャルは出会い系サイトで男を探したりしなかった。
EZwebには「@AJA出会いチャンネル」も存在
2000年2月には、サイバードがDDIセルラーやツーカー向けに「@AJA出会いチャンネル」を提供していた。
当時の報道によると、このサービスには携帯電話のEZwebトップメニューからアクセスできた。
掲載されていた場所は「EZインターネット」から「コミュニケーション・グルメ」、さらに「コミュニケーション」と進んだ先。
すでにJ-スカイやPメールDXでも提供されており、両者を合わせて1日100万件近いアクセスがあったという。
さらに同年6月には、メル友募集、地域別メル友、合コン相手募集、恋人募集といった掲示板も追加された。単に名前に「出会い」と付いていただけでなく、実際に異性との交流を目的とした機能が用意されていた。
2000年頃の携帯電話では、ニュースや天気予報を探すのと同じように、公式メニューをたどって出会いサービスを利用できたのである。
参考:Mobile Central(2000年2月1日)@AJA出会いチャンネル / 参考:ケータイWatch(2000年6月27日)掲示板追加
ただし、ドコモのiモード公式メニューは別だった
ここで注意したいのは、すべての携帯電話会社が同じ方針だったわけではないこと。
2000年7月のケータイWatchの記事では、ドコモの公式メニューでは出会いサイトを扱っていないため、エキサイトがiモード向けサービスを非公式の「勝手サイト」として提供するか検討していたことが報じられている。
また、2003年8月にドコモが発表したアクセス制限機能の資料でも、iメニューに出会い系サイトは存在しないことを明言している。
つまり、iモードで出会いサイトが利用できたことと、ドコモの公式メニューに出会いサイトが載っていたことは別の話である。
J-PHONEやEZwebで出会いサービスが公式メニューに掲載されていた一方、ドコモは異なる方針を取っていた。初期の携帯インターネットにおける「出会い」の扱いは、キャリアによって違っていたのだ。
参考:ケータイWatch(2000年7月27日) / 参考:NTTドコモ(2003年8月21日)
スタービーチの登場とガラケー出会い系の全盛期

2000年代の携帯出会い系を語るうえで外せないのが「スタービーチ(STAR-BEACH)」である。
スタービーチは1999年に始まったコミュニティサイトで、同年12月から提供された「Friends!」という掲示板が特に知られていた。
最大の特徴は、無料で気軽に書き込み、見知らぬ相手とメールでやり取りできること。
複雑なプロフィール登録や、メールを送るたびにポイントを購入する仕組みとは異なり、掲示板の募集文を見て相手に連絡するという、非常に単純なサービスだった。
「メル友募集」が当たり前だった時代
当時のインターネットでは「メル友」という言葉が広く使われていた。
メールを交換するだけの友達を募集する人もいれば、恋人を探す人、実際に会うことを目的に利用する人もいた。
今のマッチングアプリと違い、顔写真の掲載が前提ではなく、短い文章だけで相手を探すことも珍しくなかった。
住んでいる地域や年齢、簡単な自己紹介などが、相手を判断する数少ない材料だったのである。
携帯電話の小さな画面には、写真よりも文字が並ぶ。相手の姿がわからないままメールを続け、後から写真を交換することもあった。
誰とつながるのかわからない面白さがある一方で、相手の年齢や性別を偽ることも容易だった。匿名性の高さは、スタービーチの魅力でもあり、危うさでもあった。
スタービーチ以外にも増えていった出会い系サイト
2000年代に入ると、出会い系サイトは一気に数を増やしていく。
2000年にはハッピーメール、2001年にはワクワクメールが登場。これらは後のスマートフォン時代にもサービスを継続していった。
また、スタービーチのような無料掲示板だけでなく、月額制やポイント制による有料サービスも広がった。
サービスによって、利用者を検索する仕組みや掲示板の種類、メールの送信方法はさまざまだった。
携帯電話の普及が出会い系市場を大きくした
2003年10月30日には、NTTドコモのiモード契約数が4000万件を突破している。
それだけ多くの人が携帯インターネットを使うようになれば、出会い系サービスの利用者が増えていくのも自然な流れだった。
当時はスマホアプリのような機能こそなかったものの、地域別の募集掲示板、プロフィール検索、メール交換など、現在のマッチングサービスにも通じる機能がすでにそろっていた。
出会い系サイトは、ネット上の人気コンテンツであると同時に、一つの大きな商売になり始めていたのである。参考:NTTドコモ(2003年10月30日)
サクラ、架空請求、援助交際……出会い系サイトが社会問題に
出会い系サイトの利用が広がるにつれて、さまざまなトラブルも表面化するようになった。
出会い系サイトを装って利用料金を請求する業者、実際に会うつもりのない相手とのやり取りで課金を促すサクラ行為、迷惑メールによる勧誘など、悪質な商売が問題視されるようになる。
さらに深刻だったのが、未成年者を巻き込んだ性犯罪や援助交際の問題である。
誰でも気軽に書き込めるサービスは便利だった反面、相手の身元を確認する仕組みが不十分なものも多く、犯罪に利用される危険性があった。
実際出会い系サイトの末期はまともに出会える出会い系サイトなんて1割にも満たなかったんじゃないだろうか?
その頃、とある飲み会で出会い系サイトのサクラをやっている女の子と話した事がある。
彼女の仕事内容は、ある程度メールを引き延ばして男性会員にポイント(有料課金)を使わせ、一定金額に達したら携帯電話の電話番号(当然バイト先で用意された携帯電話)を教えて会話してあげると言う物。
ただし電話で話してもサイトの売り上げには全くならないので、そっちは塩対応して短時間で切り上げるらしく、聞いていて男性会員が不憫で仕方なかった。
そんな業者が多かったからか、単にスマホが普及しマッチングアプリがメインになったからかは定かでは無いが、そうして出会い系サイトは徐々に廃れていった。
「出会い」という言葉まで敬遠されるように
興味深いのが、先ほど紹介した「エキサイト 出会い」の変化である。
2000年12月、エキサイトはサービス名を「エキサイトフレンズ」へ変更した。
2002年のINTERNET Watchの取材によると、当時は出会い系サイトに関連する事件が報道されるたびに、エキサイトにも問い合わせが殺到していたという。
同社は出会い系サイトに付いた悪いイメージを払拭するため、友人や仲間探しのサービスとしての性格を強め、名称変更とともに「恋人を探す」という募集カテゴリーも廃止している。
まだ2000年の出来事である。出会い系サイトの普及が始まって間もない時期から、すでに「出会い系」という言葉に危険なイメージが付き始めていたのだ。参考:INTERNET Watch「パーソナルマッチングサービスのトレンドを追う」
2003年に出会い系サイト規制法が成立、2008年の改正が転機に

出会い系サイトに関連する事件が社会問題となるなか、2003年に「出会い系サイト規制法」が制定された。
正式名称は「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」。18歳未満の児童を犯罪被害から守ることを目的とした法律である。
これにより、出会い系サイトを通じて児童を性的な行為などに誘い出す行為が規制され、事業者にも児童の利用を防止するための対応が求められるようになった。
2008年の法改正で事業者への規制が強化
しかし、法律が制定された後も事件はなくならなかった。
警察庁の平成21年警察白書によると、2008年に出会い系サイトに関係して報告された事件は1592件。その被害者852人のうち724人が18歳未満の児童だった。
こうした状況を背景に、2008年には出会い系サイト規制法が改正され、事業者の届出制度や被害防止に向けた義務が強化された。
利用者が18歳未満ではないことを確認する仕組みも厳格化され、年齢確認が重要になっていった。確認方法は運転免許証などの書類だけでなく、法令で認められたクレジットカード決済などもある。
現在も、法律上のインターネット異性紹介事業に該当するサービスでは、事業者の届出や年齢確認などが必要となっている。
参考:平成21年警察白書 / 参考:警察庁「出会い系サイト規制法」
2009年、スタービーチのFriends!掲示板が閉鎖
法改正による影響を強く受けたサービスの一つがスタービーチだった。
1999年12月から約9年間にわたって運営されてきた「Friends!」掲示板は、2009年1月31日をもって終了した。
当時の閉鎖告知を転載した資料によると、運営側は2009年2月1日から利用者の身分証明書の提示が必要になることを理由に、サービスの終了を決めたと説明している。
それまでのスタービーチは、手軽に書き込んでメールを交換できることが大きな特徴だった。利用者の年齢確認を厳格に行う仕組みへの変更は、そのサービスのあり方そのものを変えることになる。
運営側は変更して継続するのではなく、終了を選んだ。
なお、閉鎖されたのはスタービーチの代表的な出会い掲示板「Friends!」であり、関連コンテンツがすべて同時に消えたという意味ではない。
いずれにしても、スタービーチのFriends!終了は、誰でも気軽に利用できたガラケー出会い掲示板の時代が大きく変わったことを象徴する出来事となった。参考:はてなキーワード「スタービーチ」(当時の閉鎖告知を転載)
mixiやGREEの普及で、ネット上の出会いの形も変化
出会い系サイトの規制が強化される一方で、インターネット上には新しい交流サービスが登場していた。
2004年にはmixiやGREEといったSNSがスタート。
これらは恋人探しを主目的としたサービスではなかったものの、趣味のコミュニティや日記、メッセージ機能などを通じて、知らない相手とつながる機会を提供した。
それまでの出会い系サイトが「相手を募集する場所」だったとすれば、SNSは共通の趣味や話題から人間関係が生まれる場所でもあった。
ただし、出会い系サイトだけを規制すればネット上のトラブルがなくなるわけではない。
2016年の警察庁の統計では、出会い系サイトに起因する犯罪被害に遭った児童が42人だったのに対し、SNSなどのコミュニティサイトでは1736人に上っている。
利用者同士の交流の場が、出会い系専門サイト以外にも広がったことは、新たな安全対策を考えるうえでも重要な変化だった。参考:平成29年警察白書
2010年代、出会い系サイトからマッチングアプリの時代へ

2010年代に入ると、スマートフォンの普及によってネット上の出会いは再び大きく変化する。
2012年には海外でTinderが誕生。同年10月には、日本でもPairs(ペアーズ)がサービスを開始した。
それまでの掲示板やプロフィール検索を中心としたサービスに対し、スマートフォンのマッチングアプリでは写真を見ながら相手を選び、お互いに興味を持った場合にメッセージを交換する仕組みなどが普及した。
また、恋人探し、婚活、友達探しなど、サービスごとに目的や利用者層を打ち出すようになった。
なお、Pairsは2012年10月にまずWeb版として公開され、後にスマートフォンアプリへと展開している。参考:エウレカ「ペアーズ12周年」
出会い系とマッチングアプリは別物なのか?
現在では「出会い系サイト」と「マッチングアプリ」を区別して呼ぶことが多い。
出会い系サイトには気軽な相手探し、マッチングアプリには恋活や婚活というイメージを持つ人もいるだろう。
しかし、法律上の分類は単純にサービス名で決まるわけではない。
実際の提供内容が出会い系サイト規制法の定める要件を満たせば、マッチングアプリという名称であっても「インターネット異性紹介事業」に該当する。
サービスの名称や印象が変わっても、インターネットで見知らぬ相手を探し、連絡を取り合い、実際に会うという基本的な仕組みは、1990年代のサービスから受け継がれている。
プロフィール写真や本人確認、検索条件、マッチング機能などが進化した結果、かつての出会い系サイトが担っていた役割の一部を、現在のマッチングアプリが引き継いだともいえる。
あとがき|スタービーチの時代には、今とは違う面白さがあった
1990年代末から2000年代の出会い系サイトには、現在のマッチングアプリほど便利な機能はなかった。
相手の顔がわからないこともあれば、短い自己紹介文しか情報がないこともあった。メールの返信を待つ時間も、今とは違う感覚だったはずだ。
もちろん、当時の出会い系サイトを無条件に美化することはできない。身元のわからない相手との交流には大きな危険があり、実際に多くの事件も起きていた。
それでも、スタービーチのような無料掲示板に人が集まった背景には、見知らぬ誰かとつながれるインターネットそのものへの興味や好奇心があったのだと思う。
今ではスマートフォンで写真を見比べ、条件を絞り、マッチングした相手とメッセージを交換できる。
その原点をたどると、小さなガラケーの画面に表示されていた、文字ばかりの掲示板に行き着く。
インターネットの出会いが特別なものではなくなった現在、かつての「メル友募集」という言葉に時代の隔たりを感じる。


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