匂いフェチはなぜ起こる?嗅覚と記憶の不思議な関係

匂いフェチは、言葉だけ見ると少し変わった趣味に見える。

けれど実際にはフェチの中ではかなりメジャー、さすがに大谷さんとまでは言わないけれども和田毅位のメジャー感はある。


香水の匂い、髪に残ったシャンプーの匂い、汗が少し混じった肌の匂い、服に染みた生活の匂い。そういうものに、ふと反応してしまう瞬間は誰にでも多少ある。

ただ、匂いフェチの場合はその反応がもっと強い。

顔を見るより先に、匂いで記憶が動く。
声を聞くより深く、鼻の奥に残る。
本人がいない場所でも、服や布や部屋に残った匂いだけで、その人の気配を感じてしまう。

しかも匂いフェチが惹かれるのは、必ずしも分かりやすい良い香りだけではない。
髪、首筋、うなじ、腋、胸元、足、靴、ストッキング、下着。そういう場所に残る、清潔感と生々しさの間にある匂いに反応することがある。

香水のように作られた匂いもあれば、汗や皮脂や布の奥に残る、その人自身の匂いもある。

匂いフェチは、鼻だけの話ではない。
記憶と感情と欲が、匂いをきっかけに一気に起き上がる現象でもある。

CONTENTS

匂いフェチは「好きな匂い」ではなく「記憶に刺さる匂い」に反応する

匂いフェチを「良い匂いが好きな人」と考えると、少し浅い。

もちろん、良い香りに惹かれることもある。シャンプー、柔軟剤、香水、ボディクリーム。そういう分かりやすい香りが入口になる人も多い。

ただ、本当に強く残るのは、香りそのものよりも、その匂いにくっついた記憶のほうだ。

昔好きだった人が使っていた柔軟剤の匂い。
学生時代の教室にあった汗と制汗剤が混ざった空気。
誰かの部屋に初めて入った時の、洗剤、布団、髪、肌が混ざった生活臭。
夏の帰り道、隣に立った人の首筋からふっと来た匂い。

こういう匂いは、頭で思い出そうとしなくても勝手に戻ってくる。

写真を見るより早い。
名前を聞くより深い。
音楽よりも乱暴に、昔の感覚を引きずり出してくることがある。

匂いフェチの人は、その引きずり出され方に弱い。
匂いを嗅いだ瞬間、目の前の相手だけではなく、過去の記憶、緊張、安心感、恥ずかしさ、近づいてはいけないものに近づいた感じまで一緒に立ち上がる。

だから匂いは、ただの情報ではない。
体の奥に保存されていた古い感情のスイッチに近い。

嗅覚は、感情と直結しやすい

人間の感覚の中で、匂いは少し特殊だ。

目で見たものは、まず「これは何か」と頭で整理しやすい。
耳で聞いた音も、「誰の声か」「何の音か」と判断しやすい。

けれど匂いは、理屈よりも先に感情が動く。

懐かしい。
落ち着く。
嫌だ。
近づきたい。
なぜか胸がざわつく。

こういう反応が、説明より先に出る。

匂いフェチが強い人は、この「説明より先に来る感じ」に惹かれやすい。相手の顔や体型を見て好きになるのとは違って、匂いはもっと無防備な場所に入ってくる。

しかも匂いは、本人が完全にコントロールできるものではない。

香水やシャンプーは選べる。
でも、汗の出方、肌の匂い、服に残る体温、時間が経った時の変化までは完全には隠せない。

そこに、人間の生々しさが出る。

清潔に整えられた見た目の奥に、ちゃんと体がある。
汗をかくし、緊張すれば体温が上がるし、服の内側にはその人の匂いが残る。

匂いフェチは、そこに反応する。
作られた表面ではなく、人が生きている証拠のようなものに惹かれる。

腋の匂いに反応する理由

匂いフェチの中でも、腋に反応する人は少なくない。

これはかなり分かりやすい。
腋は、匂いが出やすい場所だからだ。

汗をかきやすい。
布で隠れやすい。
体温がこもりやすい。
肌と服が密着しやすい。

しかも腋の匂いは、石けんや香水のように外から足した匂いではなく、その人の体から出てくる匂いに近い。

もちろん、一般的には「匂いを抑える場所」とされる。デオドラントを使い、汗ジミを気にし、できるだけ清潔に保とうとする場所だ。

だからこそ、フェチとしては逆に強い。

見せない場所。
隠す場所。
気にする場所。
でも、完全には消せない場所。

その中途半端な隠れ方に、妙なリアリティがある。

きれいにメイクした顔より、整えた髪より、腋のほうがずっと無防備に見えることがある。そこには少しの恥ずかしさと、生活感と、体臭への緊張が混ざっている。

匂いフェチの人にとって腋は、単に「臭い場所」ではない。
相手の清潔感と生々しさが、ぎりぎり同じ場所にあるパーツなのだ。

髪とうなじは、近づかないと分からない匂いがある

髪の匂いは、匂いフェチの入口としてかなり分かりやすい。

シャンプー、トリートメント、整髪料、外の空気、部屋の匂い、枕の匂い。髪は色々な匂いを吸いやすい。しかも、肌よりも直接的すぎないから、口に出してもまだギリギリ健全に聞こえる。

「髪いい匂いだね」

この言葉は、まだ日常会話の範囲にいる。
でも実際には、かなり距離が近い感覚だ。

髪の匂いは、その人の生活と結びつきやすい。
朝に使ったシャンプーだけではない。
外を歩いた空気、寝ていた枕、部屋の匂い、汗をかいた時間まで少しずつ混ざる。

そして、うなじや首筋になると、もっと体に近くなる。

髪の香りの奥に、体温がある。
汗とまでは言わないまでも、皮膚の湿度がある。
香りと体臭の境目が、かなり曖昧になる。

この曖昧さが強い。

清潔な香りの中に、少しだけその人自身の匂いが混ざる。
その混ざり方に、妙にリアルな距離を感じる。

髪の匂いだけなら、美容室やシャンプーの話にできる。
でも、うなじの匂いになると少し話が変わる。

そこはもう、他人が気軽に近づく場所ではない。
近づかなければ分からない。
偶然近くに立った時、抱き寄せた時、後ろを通った時、ふっと鼻に触れるくらいの距離でしか入ってこない。

だから記憶に残る。

匂いフェチの人は、その「近づかないと分からない感じ」に弱い。見えているのに遠い。隠れているのに近い。そういう矛盾が、匂いにはある。

胸元や乳房まわりの匂いは、清潔感と体温の境目にある

胸元の匂いも、匂いフェチではよく刺さる場所だ。

ここは腋ほど分かりやすく汗の匂いが出る場所ではない。
けれど、肌の体温、服の布、香水、ボディクリーム、下着の匂いが混ざりやすい。

特に胸元は、外に出しているようで、実際には服の内側にある。
首元や鎖骨は見えていても、服の奥の空気はその人に近い。

だから、胸元の匂いには独特の距離感がある。

香水をつける人は、首や胸元まわりにつけることも多い。
ボディクリームの香りも残りやすい。
そこに体温や少しの汗が混ざると、単なる香料ではない匂いになる。

「香水の匂いが好き」と言いながら、本当は香水そのものではなく、香水が肌の匂いと混ざった状態に惹かれていることもある。

これはかなり大きい。

瓶から直接嗅ぐ香水と、人の肌に乗った香水は違う。
同じ香水でも、つける人によって匂い方が変わる。
肌の温度、皮脂、汗、服の素材、時間経過で、香りは少しずつ崩れる。

その崩れ方が色気になる。

胸元や乳房まわりの匂いは、清潔感と体臭の境目にある。
石けんや香水の向こうに、相手の体温がある。
その「作られた香りが、体の匂いに負け始める感じ」に反応する人は少なくない。

股間周辺の匂いは、もっとも言いにくいフェチのひとつ

匂いフェチの話で避けて通れないのが、股間周辺の匂いだ。

ここはかなり言いにくい。
あまり直接的に語ると一気に下品になるし、清潔感の話としてぼかしすぎると嘘くさくなる。

ただ、現実として股間周辺は匂いが残りやすい場所だ。

下着で覆われる。
体温がこもる。
汗をかきやすい。
布と肌が長時間密着する。
座る、歩く、動くことで湿度が変わる。

さらに股間周辺は、体の中でもかなりプライベートな場所だ。
人前に出さない。
匂いを気にする。
清潔にしていても、完全に無臭にはならない。

だからこそ、フェチとしては強い。

匂いフェチの人にとって、股間周辺の匂いは単に性的だから興奮する、というだけではない。
そこには、普段は隠されているものを感じ取る背徳感がある。

整えられた外見の奥に、体の生々しさがある。
清潔にしているはずなのに、布の内側には体温が残る。
香水や柔軟剤では消しきれない、その人の匂いがある。

この「見えないのに存在している感じ」が、匂いフェチには刺さる。

ただし、この領域は相手の嫌悪感と紙一重でもある。
勝手に詮索するものではないし、相手が嫌がるなら完全にアウト。
フェチとして語ることと、現実で人の境界線を踏み越えることは別の話だ。

ここを混同すると、ただの気持ち悪い人になる。

下着のクロッチ部分に残る匂いは、フェチとしてかなり強い

匂いフェチの中でも、下着の匂いはかなり強い対象になる。

特にクロッチ部分は、布と体がもっとも密着する場所のひとつだ。
汗、体温、湿度、皮脂、日中の動き。そういうものが布に残りやすい。

もちろん、これはかなりプライベートな領域。
本人の許可なく触れたり嗅いだりするものではない。
そこを無視すれば、フェチではなく完全に迷惑行為になる。

ただ、フェチの構造としては分かりやすい。

下着は、その人が直接身につけていたものだ。
しかも、外からは見えない場所にある。
見えない場所にあった布に、その人の匂いが残っている。

この条件が強すぎる。

香水のように「人に嗅がせるための匂い」ではない。
髪のように「褒めても不自然ではない匂い」でもない。
下着の匂いは、本来は人に見せない生活の奥側にある。

だから背徳感が出る。

匂いフェチの人が下着に反応するのは、布そのものが好きというより、そこに残った距離感が好きなのだと思う。
さっきまで身につけていた。
肌に触れていた。
体温があった。
その人が動いていた時間が残っている。

そういう想像が、匂いを濃くする。

足の匂いは、不快と興奮の境目にある

足の匂いも、匂いフェチではかなり大きなジャンルだ。

これは腋や股間周辺とはまた違う。
足は、体の中でも「汚れやすい」「蒸れやすい」「人前では匂いを気にする」場所として扱われる。

靴を履く。
靴下やストッキングで覆う。
長時間歩く。
汗をかく。
湿気が逃げにくい。

その結果、足にはかなり分かりやすく匂いが残る。

一般的には不快なものとして扱われやすい。
だからこそ、フェチとしては強い。

匂いフェチの人にとって、足の匂いは「綺麗な香り」ではない。
むしろ、不快と興奮の境目にある。

清潔な女性の足でも、長時間靴を履けば蒸れる。
ストッキングを履いていれば、布と汗と体温が混ざる。
パンプスやブーツの中では、逃げ場のない匂いがこもる。

そこに反応する人がいる。

このフェチの面白いところは、足が「下」にあることだ。
顔や胸元のように見られるための場所ではなく、普段はあまり注目されない。
でも、靴を脱いだ瞬間に匂いが出ることがある。

そのギャップが刺さる。

きれいに整えた服装。
メイクされた顔。
香水の香り。
でも、靴を脱いだ足には一日の疲れと体温が残っている。

この落差が、足の匂いフェチにはたまらないのだと思う。

靴の匂いは「本人がいないのに気配だけ残る」から強い

足そのものではなく、靴に反応する人もいる。

靴はかなり特殊だ。
本人の体から離れているのに、本人の匂いが残りやすい。

特にパンプス、ブーツ、スニーカーのように長時間履く靴は、足の汗、体温、湿気を吸いやすい。しかも靴の中は密閉されやすい。

本人がいなくても、靴だけで気配が残る。

ここにフェチ性がある。

服の匂いも近いが、靴はもっと生々しい。
外を歩いた汚れ、足の汗、革や布の匂い、蒸れた空気が混ざる。

それは決して、万人向けの良い匂いではない。
むしろ普通は嫌がられる。

でもフェチは、普通なら避けるものに反応することがある。

靴の匂いが好きな人にとって、靴はただの履物ではない。
その人が一日動いていた証拠だ。
どこを歩いたのか、どれくらい汗をかいたのか、帰宅した時の疲れまで想像させる。

本人がいないのに、本人の存在が残っている。
この「残り香」が、匂いフェチにはかなり強い。

ストッキングの匂いは、布と肌の境目にある

ストッキングは、匂いフェチと相性がいい。

肌に密着する。
汗を吸う。
足先まで覆う。
見た目は薄くて綺麗なのに、実際にはかなり体温を受けている。

このギャップが強い。

ストッキングは、裸の足を隠しながら、足の形をそのまま見せる。
隠しているのに見えている。
見えているのに直接触れてはいない。

この曖昧さが、フェチの温床になる。

匂いの面でも同じだ。

ストッキングには、足の汗や靴の匂いが移りやすい。
さらに、布そのものの匂い、洗剤の匂い、柔軟剤の匂いも混ざる。

清潔な香りと蒸れた匂いが同じ布に残る。
そこに、かなり独特の生々しさが出る。

特にパンプスとストッキングの組み合わせは、匂いフェチ的にはかなり分かりやすい。
見た目はきちんとしている。
でも内側には、逃げ場のない湿気と体温がある。

そのギャップに反応する。

匂いフェチは、綺麗なものだけを求めているわけではない。
綺麗に見えるものの奥にある、少し崩れた匂いに引っかかることがある。

服の襟元や肌着は「その人の一日」が残る

服の匂いに反応する人も多い。

特に襟元、袖口、インナー、肌着。
このあたりは肌に近く、汗や皮脂、香水、柔軟剤が混ざりやすい。

襟元には首筋の匂いが残る。
袖口には手首や腕の匂いが残る。
インナーには胸元や背中の体温が残る。
肌着には、より直接的に体の匂いが移る。

服の匂いが強いのは、本人が着ていた時間を感じさせるからだ。

新品の服は、ただの布。
でも一日着た服は、その人の時間を含んでいる。

外に出た空気。
電車の匂い。
汗をかいた瞬間。
香水が薄れていく時間。
帰宅して脱いだ時の湿度。

そういうものが、布に残る。

匂いフェチの人にとって服は、体の延長線上にある。
本人の肌ではないのに、本人にかなり近い。

だから、脱いだ服や部屋着、枕元に置かれたシャツのようなものに妙な色気を感じることがある。

香水のせいで興奮しているようで、実は肌の匂いに反応していることもある

匂いフェチを語る時、香水はかなり厄介だ。

一見すると、香水が好きなだけに見える。
でも本当は、香水そのものではなく、香水がその人の肌で変化した匂いに反応している場合がある。

香水は、瓶から嗅いだ時と、人の肌についた時で印象が変わる。
つけた直後と、数時間後でも違う。
汗、皮脂、体温、服の布、外の空気で変化する。

だから同じ香水でも、人によって匂い方が違う。

この「その人にしかならない匂い」が、匂いフェチには刺さる。

香水は表向きの匂いだ。
人に嗅がせるための香り。
自分を演出するための香り。

でも、時間が経つとそこに体の匂いが混ざる。
完璧だった香りが少し崩れる。
甘い香りの奥に汗が出る。
清潔な香りの下に、肌の湿度が出てくる。

その崩れ方に、色気がある。

だから「香水の匂いが好き」と言いながら、実際には香水だけでは満足できない人もいる。
好きなのは香水ではなく、香水をまとった人間の匂いなのだ。

寝具や枕の匂いは、安心感と欲が混ざりやすい

寝具や枕の匂いも、匂いフェチにはかなり強い。

枕には髪の匂いが残る。
シーツには肌の匂いが残る。
布団には体温と湿気がこもる。

しかも寝具は、もっとも無防備な時間と結びつく。

眠っている時、人はかなり無防備だ。
髪も乱れる。
汗もかく。
香水も薄れる。
メイクも落ちる。
体の匂いが布に残る。

そこには、昼間の外向きの姿とは違う匂いがある。

匂いフェチにとって、寝具の匂いは安心感と欲が混ざりやすい。
好きな人の匂いが残った枕で落ち着く。
布団に残った体温の気配に反応する。
部屋に入った瞬間の生活臭で、妙にその人を近く感じる。

これはかなり人間くさい。

香水やシャンプーのような演出ではない。
寝ていた時間、肌が触れていた布、呼吸、汗、体温。そういうものが残る。

寝具の匂いは、相手の生活のかなり奥側にある。
だからこそ、ただの布なのに妙に強い。

匂いフェチは「清潔」と「生々しさ」の境目にある

匂いフェチを語る時に大事なのは、不潔さが好きなわけではないということだ。

もちろん、かなり特殊な好みもある。
ただ、多くの場合は「清潔だけど完全な無臭ではない」状態に反応しやすい。

シャワーを浴びた後の首筋。
外出後の髪。
一日履いたストッキング。
香水が薄れて体温と混ざった胸元。
汗を抑えようとしても残る腋の匂い。
脱いだばかりの服や下着に残る布の湿度。

ここにあるのは、単純な汚れではない。

清潔にしている。
身だしなみも整えている。
でも、人間だから匂いは残る。

その残り方に色気がある。

完全な無臭は、むしろ人間味が薄い。
人工的な香りだけでも、どこか物足りない。

匂いフェチの人が惹かれるのは、その中間だ。

清潔感の中に少しだけ体臭がある。
香水の奥に汗がある。
布の奥に肌がある。
見た目の奥に、その人の体がある。

この境目が、匂いフェチの核心に近い。

匂いフェチが興奮する具体例

匂いフェチが反応しやすい対象を整理すると、だいたい次のようになる。

  • 髪の匂い
    シャンプー、外気、枕、部屋の匂いが混ざる。清潔感がありつつ、その人の生活が残る。
  • うなじや首筋の匂い
    近づかないと分からない距離感がある。香水、汗、体温が混ざりやすい。
  • 腋の匂い
    汗、体温、布の密着が出やすい。隠す場所だからこそ、清潔感と生々しさの差が強い。
  • 胸元の匂い
    香水、ボディクリーム、下着、体温が混ざる。甘い香りと肌の匂いが重なりやすい。
  • 股間周辺の匂い
    もっともプライベートで言いにくい領域。下着、体温、湿度、隠されている感じが強い。
  • 下着のクロッチ部分の匂い
    布と肌が長時間密着した場所。本人の生活や体温が直接残りやすく、背徳感が強い。
  • 足の匂い
    靴や靴下で蒸れやすい。不快と興奮の境目にあり、フェチとしてはかなり分かりやすい。
  • 靴の匂い
    本人がいなくても気配だけが残る。一日歩いた時間や湿度が想像される。
  • ストッキングの匂い
    見た目の綺麗さと、内側の蒸れや体温のギャップが強い。
  • 服や肌着の匂い
    襟元、袖口、インナーにその人の一日が残る。布越しの体温がフェチ性を持つ。
  • 枕や寝具の匂い
    髪、肌、汗、睡眠中の無防備さが残る。安心感と欲が混ざりやすい。
  • 香水が肌で変化した匂い
    香水そのものではなく、体温や汗と混ざった後の匂いに惹かれる。

こうして見ると、匂いフェチは単に「匂いが好き」なのではない。
その人の体温、生活、隠された部分、時間の経過に反応していると言ったほうが近い。

嫌な匂いと好きな匂いの境目はかなり個人的

匂いフェチが面白いのは、万人受けしないところだ。

ある人には不快な匂いでも、別の人には強く刺さる。
汗の匂い、服に残った匂い、肌の匂い。普通なら避けられるものが、相手によっては急に特別なものになる。

これは匂いが、単純な「良い」「悪い」だけで決まらないからだ。

誰の匂いなのか。
どんな場面で嗅いだのか。
その時の感情はどうだったのか。
過去に似た匂いと結びついた記憶があるのか。

こういう条件で、匂いの意味は変わる。

嫌いな人の汗は不快でも、好きな人の汗は妙に許せる。
知らない人の体臭は距離を取りたくなるのに、親密な相手の匂いは安心材料になる。

かなり勝手だ。
でも、フェチとはだいたい勝手なもの。

理屈では説明しきれない。
本人にも、なぜそれが刺さるのか分からない。
けれど体だけが先に反応する。

匂いフェチは、その最たるものかもしれない。

匂いフェチは「近づきたい欲」と相性がいい

匂いは、遠くからは分かりにくい。

顔は遠くから見える。
声も少し離れていても届く。
服装や仕草も、距離があっても分かる。

でも、肌の匂いは近づかないと分からない。

ここが重要だ。

匂いフェチは、距離のフェチでもある。
相手に近づく理由が欲しい。
もっと近くにいたい。
普通の距離では分からないものを知りたい。

そういう欲と相性がいい。

首筋の匂い、髪の内側の匂い、腋にこもった匂い、服の襟元に残った匂い、ストッキングや靴に残った匂い。どれも、相手との距離が近くなければ分からない。

だから匂いは、秘密っぽい。
目に見える露出よりも、むしろ隠れている感じがある。

そして、人は隠れているものに弱い。

堂々と見せられたものより、偶然見えたもの。
説明されたものより、勝手に感じ取ってしまったもの。
香水のように演出された匂いより、服の奥や肌の近くに残った匂い。

そこに、自分だけが踏み込んだような感覚が生まれる。

もちろん、それは現実にはただの錯覚かもしれない。
でもフェチは、その錯覚で十分に強い。

匂いフェチには、少しだけ背徳感がある

匂いに惹かれることには、少しだけ言いにくさがある。

顔が好き。
声が好き。
スタイルが好き。
ファッションが好き。

このあたりはまだ言いやすい。

でも「匂いが好き」となると、急に距離が近すぎる。
さらに「腋の匂いが好き」「足の匂いが好き」「下着に残った匂いが好き」となると、言葉にした瞬間に生々しくなる。

そこに背徳感がある。

匂いは、相手の許可なく勝手に感じ取れてしまうものでもある。だからこそ、フェチとして扱う時には距離感が大事になる。

本人が嫌がっているのに嗅ぐ。
相手を不快にさせる。
勝手に匂いを性的な目で消費する。

これはただの迷惑行為になる。

匂いフェチそのものが悪いわけではない。
ただ、匂いは相手の体にかなり近い感覚なので、扱い方を間違えると一気に気持ち悪さに変わる。

フェチは、相手の存在があって初めて成立する。
だから、相手の嫌悪感を踏み越えた瞬間に、もうフェチではなくなる。

ここはかなり大事だ。

匂いは、記憶の中でどんどん濃くなる

実際の匂いより、思い出の中の匂いのほうが濃くなることがある。

あの時の髪の匂い。
夏の部屋で近づいた時の肌の匂い。
雨の日の服の匂い。
緊張していた時の汗の匂い。
一日履いた靴の匂い。
下着や寝具に残った、もう本人はいないのに残っている気配。

そういう記憶は、時間が経つほど妙に編集されていく。

本当はそこまで強い匂いではなかったかもしれない。
でも、その場の感情が強かったせいで、匂いの印象だけが濃く残る。

好きだった。
触れたかった。
言えなかった。
近すぎて落ち着かなかった。

そういう感情が、匂いに貼り付く。

だから何年も経ったあと、似た匂いを嗅いだだけで、急に昔の自分に戻ることがある。頭では忘れていたのに、鼻だけが覚えている。

匂いフェチが厄介なのはここだ。

視覚の記憶は薄れても、匂いの記憶だけが変なところに残る。
顔は忘れたのに、首筋の匂いだけ覚えている。
会話の内容は忘れたのに、部屋の空気だけ覚えている。

それは少し怖い。
でも、その怖さごと色気になってしまう。

あとがき

匂いフェチの話をしていると、最後にどうしても「香水」のことを思い出す。

あの歌が流行った頃、街のどこにいても「ドルチェ&ガッバーナ」という言葉だけが妙に耳に残った。別に香水の成分を説明しているわけでもないのに、あのフレーズだけで、誰かの匂いと、終わった恋と、思い出したくない記憶まで一緒に立ち上がってくる。

考えてみると、あの曲もかなり匂いフェチ的な歌だったのかもしれない。

人は、顔や声より先に、匂いで誰かを思い出すことがある。
もう会っていない人でも、同じ香りがしただけで急に戻ってくる。
忘れたつもりだった気持ちまで、鼻の奥から勝手に引っ張り出される。

そういえば、瑛人って今なにしているんだろう。

「香水」のあと、テレビで見かける機会は減ったけれど、今も音楽活動は続けているし、逗子の海の家で働いている話もあるらしい。なんだかそれはそれで、あの曲の後日談みたいで少し良い。

一発で世間の記憶に残った人は、そのあとが見えにくくなる。
でも、匂いと同じで、一度強く残ったものはなかなか消えない。

匂いフェチも、たぶんそれに近い。
忘れたはずの人、終わったはずの時間、もう戻らない距離。そういうものが、ある日ふっとした香りで戻ってくる。

香水のせいかもしれない。
汗のせいかもしれない。
髪の匂いかもしれない。
腋や下着や靴に残った、もっと生々しい匂いかもしれない。

けれど結局、鼻が覚えてしまったものは厄介だ。
頭では忘れても、体が勝手に思い出す。

匂いフェチとは、たぶんそういうものだ。
きれいな記憶だけではなく、少し湿っていて、少し恥ずかしくて、少し戻りたくなる記憶まで嗅ぎ分けてしまう、かなり人間くさいフェチなのだと思う。

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