インターネットの歴史を真面目にたどろうとすると、案外避けて通れないものがある。
それがアダルトサイトだ。
何だそんな話か、と思うかもしれない。
でも、ビデオデッキの普及にアダルトビデオが少なからず影響したように、家庭用パソコン、ひいてはインターネットの普及にも、アダルトサイトがかなり深く関わっていたことは想像しやすい。
人は新しい機械を、いつも高尚な目的だけで使い始めるわけではない。
仕事のため?
勉強のため?
情報収集のため?
もちろん、それもあるかもしれない。
けれどその裏側には、人に見られずに何かを見たい、こっそり知りたい、覗いてみたいという、もっと生々しい欲望もあった。
実際、ネット初期の決済、会員制、画像配信、動画配信、広告モデルの発展には、アダルト業界が深く関わっていた。
人間は昔から、便利なものより先に「見たいもの」へ飛びつく。
その意味で、アダルトサイトの歴史は、かなり人間くさいインターネット史でもある。
世界で最初のアダルトサイトは何だったのか?
日本で最初のアダルトサイトは何だったのか?
今回は、ネット黎明期に生まれた初期アダルトサイトの記録をたどりながら、世界初と日本初の有力候補を整理していく。
まず結論|世界初はSizzleが有力、日本初は東京トップレスが有力

このテーマで一番ややこしいのは、「最初」という言葉が思った以上に広いことだ。
たとえば、単にネット上にアダルト画像が存在した時期までさかのぼれば、Webサイト以前の掲示板文化やファイル共有の話まで入ってくる。
一方で、きちんとしたWebサイトとして公開され、しかも商業的に運営されていたものに絞るなら、候補はかなり整理しやすくなる。
現時点で、記事として最も自然にまとめやすいのは次の整理だ。
- 世界初の商業アダルトサイトとして有力
Sizzle - 世界初級の有名アダルト系ドメイン
Sex.com - 初期の有料会員制アダルトサイトの成功例
Danni’s Hard Drive - 日本初のアダルトサイトとして有力
東京トップレス
つまり、きれいに一文で言えばこうなる。
世界初の商業アダルトサイトとしては Sizzle が有力。
日本初のアダルトサイトとしては 東京トップレス が有力。
完全に一択で断定できるほど資料がそろっているわけではないが、歴史記事としてはこの整理が一番納得しやすい。
世界初候補の本命|Sizzleとは何だったのか

Sizzle は、世界初の商業アダルトサイトとして名前が挙がることが多い。
ここで大事なのは、「世界初のアダルトサイト」と「世界初の商業アダルトサイト」は微妙に意味が違うという点と、サラダバーが有名なSizzlerとは一切関係が無いと言う点である。
と言うとかなり広い話になるが、きちんとサイトとして運営されビジネスとして成立していたかどうかが基準になる。
Sizzle はその意味でかなり有力だ。
ネット黎明期に、アダルトコンテンツを単なる遊びではなく、ちゃんと商売として成立させた初期サイトのひとつと見られている。
今の視点で振り返ると、サブスクも決済も当たり前に見える。
でも当時はそうではなかった。
画像を並べるだけでも回線速度やサーバー負荷に苦労し、会員管理も決済も今よりずっと原始的だった。
その中で、アダルトサイトはかなり早い時期から「見せる」「集める」「払わせる」の流れを作っていた。
Sizzle はその象徴として語られる存在だ。
ただし、ネット史は昔に行くほど記録が曖昧になる。
だから「絶対にSizzleが唯一の世界初」と断言するより、「商業アダルトサイトとして最有力」と言う方が、今私が提示出来る回答としては誠実だ。
Sex.comは世界初ではないのか
Sex.com という名前を聞くと、むしろこっちが世界初に見える人も多いはずだ。
たしかに、知名度だけなら圧倒的だ。
ドメイン名としてのインパクトも抜群で、インターネット史の中でもかなり象徴的な名前になっている。
ただ、ここにはひとつ落とし穴がある。
Sex.com は古いドメインではあるものの、最初に取得された時点で、すぐに完成されたアダルトサイトとして動いていたわけではない。
つまり、ドメインとしては早い。
だが、運営実態まで含めて「世界初のアダルトサイト」と言い切るには少し弱い。
その後、Sex.com はアダルト系の巨大な集客装置として強い存在感を持つようになる。
名前の強さだけでアクセスを集められるという意味でも、いかにも初期インターネットらしいサイトだった。
ここで面白いのは、ネット初期には「何を見せるか」と同じくらい「どんな名前を取るか」が重要だったことだ。
今よりずっと検索が弱かった時代だから、分かりやすいドメイン名そのものが価値だった。
Sex.com は世界初そのものではなくても、最初期ネットの欲望と金の匂いを最も象徴する名前だったとは言える。
初期の成功例として重要なDanni’s Hard Drive
Sizzle や Sex.com と並んで、初期アダルトサイト史でよく名前が出るのが Danni’s Hard Drive だ。
これは1995年に始まったサイトで、単に画像を置くだけではなく、会員制で運営される有料サイトとしてかなり成功した。
今の感覚で言えば、モデル個人のブランドを中心にした有料ファンサイトに近い。
ここが重要だ。
初期のアダルトサイトは、ただ刺激の強い画像を並べれば勝てたわけではない。
誰を見せるのか、どう更新するのか、どのように課金させるのか。
その設計がうまかったところが生き残った。
Danni’s Hard Drive は、その意味でかなり現代的な発想を持っていた。
単なる古いエロサイトではなく、有料コンテンツビジネスの初期成功例として見た方が面白い。
だから世界初という一言で片づけるよりも
Sizzle は世界初候補
Sex.com は象徴的ドメイン
Danni’s Hard Drive は成功モデル
と役割を分けて見ると整理しやすい。
日本で最初のアダルトサイトは東京トップレスが有力

日本初については、世界初よりだいぶ答えを出しやすい。
有力候補は東京トップレスだ。
1995年に登場したとされ、日本初のアダルトサイトとして語られることが多い。
内容としては、風俗レポートや女性の写真などを扱うサイトだったとされている。
1995年という年は、今振り返るとかなり早い。
まだ一般家庭にインターネットが広がり切る前で、ようやく「これからネットが来るらしい」と空気が変わり始めた時代だ。
そんな段階で、すでにアダルトサイトが動いていたというのは、ある意味でとても自然でもある。
人は情報のためにもネットへ行くが、欲望のためにもネットへ行く。
そして後者の方が、案外早い。
東京トップレスが面白いのは、日本のネット史のかなり早い段階で「見るためのサイト」として立ち上がっていた点にある。
ニュースでも学術でもなく、まず見たいものへ向かう。
そこに、インターネットの普及を支えた別の動機がよく出ている。
東京トップレスはどんなサイトだったのか
今の感覚でアダルトサイトを想像すると、真っ先に動画を思い浮かべる人が多いと思う。
でも1995年当時はまったく違う。
主役は画像だった。
動画はまだ重い。
通信回線は遅い。
電話代もかかる。
つまり、今のようにスマホで一瞬再生という世界ではない。
当時は、ページを開くこと自体が少し儀式めいていた。
リンクを押す。
待つ。
画像がじわじわ出る。
ようやく表示される。
この不便さは、今の人からすると笑ってしまうかもしれない。
ただ、その不便さの中には独特の発見感があった。
目的のものにたどり着くまでに時間がかかるぶん、「見つけた」という感覚も強かった。
東京トップレスは、そういう時代の空気をまとった存在だ。
今の洗練された配信サービスとは別物で、もっと手探りで、もっと雑多で、もっと生々しい。
だからこそ、歴史として面白い。
なぜアダルトサイトはネット黎明期に強かったのか

理由はシンプルだ。
人は、人に見られずに見たいものがある。
書店で買うのは少し恥ずかしい。
レンタル店で借りるのも気が引ける。
誰かに知られたくはない。
でも見たい。
インターネットは、そこにぴったりはまった。
家の中で見られる。
匿名に近い感覚がある。
世界中のコンテンツへつながれる。
しかも、探す行為そのものが少し秘密っぽい。
この条件がそろえば、アダルトサイトが強いのは当然だった。
そして実際、ネットビジネスの多くの仕組みは、この領域でかなり早く試されていた。
- 会員制サイト
- オンライン決済
- サーバー負荷への対応
- 画像配信の最適化
- 動画配信への移行
- バナー広告
- アフィリエイト的な送客
要するに、アダルトサイトは単なる裏文化ではなかった。
かなり早い段階から、ネットで人を集めて、課金させて、継続させる仕組みを作っていた。
人間の欲望は、しばしば技術を前に進める。
少し身も蓋もないけれど、ネット史を見ているとそれは否定しにくい。
Wayback Machineで当時の空気を見るならここ
昔のサイトは今のWebのようにきれいに残っていない。
ただ、Wayback Machine を使うと、当時の痕跡をたどれることがある。
見たい人向けに、確認用のURLを置いておく。
Sizzle
https://web.archive.org/web/*/http://www.sizzle.com/
東京トップレス
https://web.archive.org/web/*/http://www.tokyotopless.com
Sex.com
https://web.archive.org/web/*/http://www.sex.com
Danni’s Hard Drive
https://web.archive.org/web/*/http://www.danni.com
古いページは保存状態にばらつきがあり、画像が欠けていたり、うまく表示されなかったりする。
それも含めて、いかにも初期インターネットという感じがする。
あとがき|最初のアダルトサイトをたどると、ネットの本音が見えてくる
世界で最初のアダルトサイトをひとつに断定するのは簡単ではない。
資料の残り方にも差があるし、「最初」の定義もひとつではないからだ。
それでも、記事として整理するならこうなる。
世界初の商業アダルトサイトとしては Sizzle が有力。
象徴的な初期ドメインとしては Sex.com が強い。
有料会員制の成功例としては Danni’s Hard Drive が重要。
日本初のアダルトサイトとしては 東京トップレス が最有力。
この話が面白いのは、単なるエロの歴史で終わらないところにある。
アダルトサイトの歴史を追うと、インターネットが何によって普及し、何によって進化したのかが見えてくる。
人は便利だからネットを使う。
でも、それだけじゃない。
見たいから、知りたいから、こっそりのぞきたいから、人は新しい技術を覚える。
きれいごとだけでは動かない。
むしろ、少し後ろめたい本音の方が技術を押し進めることすらある。
世界初のアダルトサイトを調べると、結局そこにたどり着く。
ネットの歴史は、回線やサーバーの歴史である前に、人間の欲望の歴史でもあるんだなと。


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