エロ漫画雑誌に掲載されている作品を見ていると、気になるのが漫画家へ支払われる原稿料です。
毎号20ページから30ページほどの漫画を描いているなら、かなり稼いでいるようにも見えます。しかし実際には、成人向け漫画雑誌の原稿料を出版社が公表するケースはほとんどありません。
漫画家本人が原稿料を明かすことも少なく、新人と大御所でどのくらい違うのか、雑誌1本を描くといくらになるのか、外からはなかなか見えない世界です。
そこで今回は、成人向け漫画雑誌で公表された過去の実例、漫画家や編集者の証言、一般漫画誌の原稿料などをもとに、エロ漫画家の原稿料を調べてみました。
先に結論をまとめると、成人向け漫画雑誌では、モノクロ1ページあたり6,000円から1万円前後がひとつの中心帯と考えられます。
継続して掲載される作家や人気作家なら、それ以上になる可能性もあります。ただし、大御所だから必ず1ページ数万円になるわけではありません。
現在は雑誌の原稿料だけで生活するのではなく、商業誌で名前を広め、同人誌やダウンロード販売で利益を得る作家も増えています。

漫画の原稿料は1ページ単位で決まる

漫画雑誌の原稿料は、基本的に完成した原稿1ページごとの金額で計算されます。
1ページ8,000円で24ページの読み切りを描いた場合、原稿料は19万2,000円。1ページ1万円なら24万円です。
カラー原稿はモノクロ原稿より高く設定される場合がありますが、雑誌や出版社によって条件は異なります。
また、ページ単価に含まれるのは完成原稿に対する報酬です。
作品の構想を練る時間、資料集め、編集者との打ち合わせ、ネームの描き直し、修正作業などに、別料金が加算されるとは限りません。
漫画家は出版社の社員ではなく、個人事業主として仕事を請け負うのが一般的です。液晶タブレットやパソコン、制作ソフト、資料、通信費、アシスタント代なども、自分で負担することになります。
迷路亭愛ページ単価だけ見ると悪くなさそうだけど、完成するまでの時間と経費まで入れると、印象はずいぶん変わるのよ。
エロ漫画雑誌の原稿料はほとんど公表されていない


成人向け漫画雑誌に限った原稿料の公式資料は、ほとんど見つかりません。
出版社と漫画家の間で個別に決められる契約条件であり、雑誌の読者へ公開する必要がないためです。
その中で比較的よく知られているのが、茜新社の成人向け漫画雑誌『COMIC LO』の例です。
公開されている記録によると、同誌は2018年に基本原稿料を1ページ7,500円から8,000円へ引き上げたとされています。
ただし、これは2018年当時の基本原稿料です。現在も同額なのか、作家の実績によってどこまで増額されるのかは公表されていません。
『COMIC LO』編集長へのインタビューでは、原稿料の引き上げや紙代の上昇によって、長く黒字だった雑誌単体の収支に赤字が出始めたことも語られています。
雑誌側も単純に原稿料を安く抑えているわけではなく、発行部数や雑誌価格との間で難しい調整を迫られていることが分かります。
漫画家や業界関係者による公開証言では、成人向け商業漫画の原稿料について、1ページ6,000円から1万円ほどという金額が語られることもあります。
ただし、こうした証言は出版社の公式発表ではありません。掲載誌、時期、作家の実績、電子印税の有無などによって条件が変わるため、あくまで参考値として見る必要があります。
新人・中堅・大御所の原稿料を推定すると


成人向け漫画だけを対象にした統計はないため、正確な平均額を出すことはできません。
そこで『COMIC LO』の公表例、成人向け漫画に関する証言、一般漫画家が公開した原稿料を重ねると、次のような範囲がひとつの目安になります。
| 作家の立場 | 1ページあたりの推定額 | 24ページを描いた場合 |
|---|---|---|
| 新人・商業未経験 | 6,000円から9,000円前後 | 14万4,000円から21万6,000円 |
| 継続掲載のある作家 | 8,000円から1万2,000円前後 | 19万2,000円から28万8,000円 |
| 人気作家・売れっ子 | 1万円から1万5,000円以上 | 24万円から36万円以上 |
| 大御所・特別条件の作家 | 個別交渉 | 非公開 |
この表は、出版社が公表した成人向け漫画業界の公式相場ではありません。
下限付近は成人向け漫画誌で確認できる実例や証言を参考にし、上限付近は一般商業漫画で公開されている原稿料も含めて推定しています。
新人漫画家は6,000円から9,000円前後
成人向け漫画雑誌でデビューする新人の場合、1ページ6,000円から9,000円前後が現実的な目安になりそうです。
一般漫画業界でも、新人の原稿料は1ページ7,000円から8,000円前後から始まることが多いと、漫画編集者への取材で紹介されています。
実際に新人時代の原稿料明細を公開している漫画家にも、1ページ7,000円だったという例があります。
成人向け漫画では『COMIC LO』が2018年に基本原稿料8,000円とした記録があるため、新人や若手の中心帯も、この周辺にあると考えるのが自然です。
継続掲載されると原稿料が上がることもある
雑誌への掲載を重ね、締め切りを守れることや一定の人気が確認されると、原稿料が引き上げられる場合があります。
一般漫画業界では、新人から中堅、ベテランへ進むにつれて、1ページ1万円、2万円、3万円と上がっていく例が紹介されています。
ただし、成人向け漫画雑誌は一般向けの大手漫画誌より発行部数が小さく、出版社が支払える金額にも限界があります。
人気が出たからといって、原稿料が際限なく上がっていくわけではありません。
大御所でも原稿料は非公開
有名なエロ漫画家や、何十年も活動している大御所のページ単価は、ほぼ公開されていません。
一般漫画業界では人気作家やベテラン作家が1ページ数万円を受け取る例もありますが、成人向け漫画雑誌で同じ水準が保証されるわけではありません。
大御所になるほど、雑誌原稿のページ単価を上げてもらうより、単行本の印税や同人誌の売上で収入を伸ばす方が現実的な場合もあります。
すでに固定ファンを持っている作家なら、商業誌へ24ページを納めて数十万円を受け取るより、自分で同人誌を発売した方が大きな利益になる可能性があるからです。



大御所なら原稿料も青天井、とは限らないの。雑誌そのものが払える金額には上限があるしそもそも少年誌等と比べたら成人向け漫画雑誌の相場はどうしても大分下がってしまうわ。
24ページ描くと実際にはいくら残る?


『COMIC LO』で公表された過去の基本原稿料と同じ、1ページ8,000円で計算してみます。
24ページの読み切りを描いた場合、原稿料は19万2,000円です。
漫画家などの個人へ支払われる原稿料は、原則として源泉徴収の対象になります。
1回の支払額が100万円以下なら、原稿料に対して10.21パーセントの所得税と復興特別所得税が差し引かれます。
19万2,000円から単純に10.21パーセントを差し引くと、振込時の金額は約17万2,000円です。
ただし、源泉徴収は最終的な税額ではなく、所得税の前払いにあたります。実際の納税額は年間所得や必要経費をもとに、確定申告で精算されます。
さらに原稿を描くために、次のような費用がかかります。
- パソコンや液晶タブレット
- 漫画制作ソフト
- 資料や書籍
- 通信費
- 作業部屋の家賃や電気代
- アシスタントや外注スタッフへの報酬
24ページを描いて原稿料19万2,000円。
制作速度やアシスタントの人数は作家によって異なりますが、漫画1本を完成させるには、企画、ネーム、下描き、ペン入れ、仕上げ、修正と多くの工程があります。
それだけの作業をこなしても、24ページで得られる原稿料は20万円未満。しかも、これは経費を引く前の金額です。
会社員のような固定給や有給休暇、社会保険料の会社負担もなく、次の依頼がいつ入るかも保証されていません。原稿のない期間に備えるための生活費も、自分で確保する必要があります。
原稿料19万2,000円は、そのまま自由に使える収入というより、漫画家として仕事を続けるための経費を含んだ売上に近い金額です。
一般漫画誌と比べるとエロ漫画の原稿料は安い?


成人向け漫画誌の1ページ8,000円前後という金額は、大手少年漫画誌と比べると低く見えます。
『週刊少年ジャンプ』は2024年11月から、本誌掲載作品の最低原稿料をモノクロ1ページ2万900円へ改定しました。公式動画でも、この金額が税込であることが説明されています。
24ページなら、単純計算で50万1,600円です。
成人向け漫画誌で1ページ8,000円なら19万2,000円なので、かなり大きな差があります。
ただし、『週刊少年ジャンプ』は日本最大級の漫画雑誌です。成人向け漫画誌だけでなく、中小規模の一般漫画誌と比べても高い水準であり、出版業界の標準価格とはいえません。
少年漫画や青年漫画には、ヒット後のテレビアニメ化、映画化、ゲーム化、グッズ販売、海外出版といった大規模な展開があります。
作品が出版社にとって巨大な財産へ成長する可能性があるため、将来を見込んで新人作家へ高い原稿料を支払いやすい構造です。
一方、成人向け漫画は広告を出せる場所や販売できる書店が限られます。映像化やグッズ展開にも制約があり、雑誌の発行部数も一般誌ほど大きくありません。
描き込みが少ないわけでも、制作が簡単なわけでもないのに、雑誌の規模によって原稿料に差がついてしまう。ここは成人向け漫画家にとって厳しいところです。
今のエロ漫画雑誌はアーティストのCDに近い


現在のエロ漫画家と商業誌の関係は、音楽アーティストにおけるCDとライブの関係に例えると分かりやすくなります。
かつては、CDそのものを大量に売ることがアーティストの大きな収入源でした。
現在は、音楽配信やCDをきっかけに曲と名前を知ってもらい、メインの収入源であるライブ、グッズ、ファンクラブなどへファンをつなげる為の名刺のような認識をしているアーティストが多いように思います。
成人向け漫画もそれと似ている部分があります。
商業誌に作品を掲載すれば、漫画家は一定の原稿料を受け取りながら、雑誌の読者へペンネームと作風を知ってもらえます。
商業誌への掲載歴は、漫画家として編集部のチェックを通過したことを示す名刺にもなります。
雑誌で作品を読んだ人が作家名を検索し、Xやpixivをフォローする。その後、同人誌、ダウンロード作品、支援サイトなどを購入してくれる流れです。
商業誌がCDや音楽配信なら、同人誌即売会はライブ会場。
ダウンロード販売はオンラインライブや映像作品、支援サイトはファンクラブに近い存在といえます。
雑誌原稿だけで最大の利益を得るのではなく、商業誌を入口にして作家自身のファンを増やす形です。



雑誌で名前を覚えてもらって、同人で作家そのものを推してもらう。今はこの流れがとても自然になっているの。
同人誌は売れれば原稿料を大きく超える


商業誌では、掲載作品が読者から大好評でも、支払われる原稿料が突然何倍にもなるわけではありません。
1ページ8,000円で契約していれば、基本的には8,000円にページ数を掛けた金額です。
一方、同人誌やダウンロード作品は、販売数が増えるほど作家の収入も増えていきます。
pixivisionが2019年に公開したインタビューでは、オリジナル成人向け同人作品を中心に活動する漫画家が、年間5,000万円を超える勢いで作品を購入されていると明かしています。
同席した元成年漫画雑誌編集長も、成人向けの商業出版だけで同じ水準へ到達する漫画家はいないだろうと説明しています。
定価1,000円の単行本で印税率を10パーセントとした場合、印税5,000万円を得るには50万部が必要になるためです。
もちろん、これは成人向け同人漫画家の平均収入ではありません。
同じインタビューでは、独立後に年収が50万円まで下がった時期や、最初のダウンロード作品が2週間で約200本しか売れなかった経験も語られています。
同人誌は、売れれば商業誌の原稿料を大きく超えます。
しかし数か月かけて制作しても、売れなければ制作期間中の原稿料はゼロ。商業誌より大きな可能性がある代わりに、失敗のリスクも作家自身が背負います。
商業誌には原稿料以外の価値がある


原稿料だけを比べると、商業誌で描くより同人誌を作った方がよく見えるかもしれません。
それでも成人向け漫画家が商業誌で描くのは、お金以外にも大きな価値があるからです。
完成原稿を納品すれば報酬が支払われる
同人誌は作品を完成させ、販売を始めるまで売上が発生しません。
商業誌なら、依頼された原稿を契約どおりに完成させて納品すれば、作品の人気や雑誌の販売数にかかわらず原稿料が支払われます。
大ヒットによる爆発力はなくても、制作に対する最低限の報酬が保証される安心感があります。
編集者から助言を受けられる
商業誌では、担当編集者と相談しながら作品を作ります。
ストーリーの流れ、キャラクターの魅力、ページ配分、濡れ場へ入るタイミング、読者に伝わりにくい場面などを、第三者の視点から指摘してもらえます。
成年漫画誌の元編集長も、新人の育成や、アイデアを求める作家への助言は、編集者が提供できる価値だと説明しています。
雑誌が持つ読者へ作品を届けられる
無名の作家が個人で同人誌を発売しても、その作品の存在を知られなければ購入されません。
漫画雑誌には、すでに雑誌を定期的に購入している読者がいます。
新人でも一定数の人へ作品を読んでもらえることは、商業誌ならではの強みです。
商業単行本へまとめられる可能性がある
雑誌掲載作品がたまると、商業単行本として発売される場合があります。
単行本が発売されれば紙や電子の印税が加わり、過去に描いた作品も長く販売されます。
ただし、雑誌に掲載されれば必ず単行本になるわけではありません。出版社や雑誌によって、単行本化の条件や印税率も異なります。
商業誌と同人誌の両方で活動する作家も多い


現在の成人向け漫画家は、商業誌か同人誌のどちらか一方だけを選ぶとは限りません。
商業誌で読み切りを掲載しながら、空いた期間にオリジナル同人誌を制作する。
商業単行本を発売したあと、SNSや支援サイトで新作情報を発信する。
紙の同人誌をイベントで販売し、後日ダウンロード版も配信する。
複数の販売方法と収入源を組み合わせる活動が可能になっています。
商業誌には、原稿料の保証、編集者の助言、出版社の信用、既存読者への露出があります。
同人誌には、作品内容、ページ数、販売価格、発売時期を自分で決められる自由があります。
雑誌で知った読者が同人作品を購入することもあれば、同人作品で人気を得た作家が編集者に声をかけられ、商業誌へ進出することもあります。
商業と同人は、完全に対立するものではありません。
お互いが作家と読者を運び合う関係になっているのです。



商業で信用を積み、同人で自由と利益を得る。どちらかを捨てるより、上手に使い分ける作家も多いわ。
エロ漫画家が契約前に確認したいこと


編集部から執筆依頼を受けたときは、1ページあたりの原稿料だけで契約を判断しない方が安全です。
確認したいのは、次のような条件です。
- モノクロ原稿のページ単価
- カラー原稿のページ単価
- 消費税を含む金額か
- 原稿料の支払時期
- 修正や描き直しの範囲
- 電子単話として販売された場合の印税
- 紙の単行本が発売された場合の印税
- 電子単行本の印税
- 他媒体へ再録された場合の報酬
- 海外版へ使用された場合の報酬
- 著作権や二次利用に関する条件
成人向け漫画は、紙の雑誌、電子雑誌、電子単話、紙の単行本、電子単行本、海外版など、ひとつの原稿が複数の形で販売される可能性があります。
最初の原稿料に、電子配信や再録の利用料まで含まれている契約もあれば、販売数に応じた印税が別に支払われる契約もあります。
日本漫画家協会は、書籍用の描き下ろし作品で雑誌掲載時のような原稿料を発生させる交渉は、一般的に非常に難しいと説明しています。
その代わりに、アシスタント代や外注費を出版社に負担してもらうことや、単行本価格を調整することが交渉例として挙げられています。
原稿料が1ページ1,000円高いかどうかだけでなく、作品が販売され続けたとき、作者へどのような収入が入るのか。
長い目で見ると、こちらの方が大きな違いになることもあります。
エロ漫画雑誌の原稿料まとめ


成人向け漫画雑誌の原稿料は、出版社からほとんど公表されていません。
確認できる具体例では、『COMIC LO』が2018年に基本原稿料を1ページ7,500円から8,000円へ引き上げたと記録されています。
漫画家や業界関係者の証言を含めると、新人は1ページ6,000円から9,000円前後、継続掲載作家は8,000円から1万2,000円前後がひとつの目安です。
人気作家なら1万円を超える可能性もありますが、大御所を含めた統一相場はありません。
1ページ8,000円で24ページを描いた場合、原稿料は19万2,000円。
ここから源泉徴収や制作経費が差し引かれ、仕事がない期間の生活費も用意しなければなりません。
商業誌の原稿料だけで、安定した生活を続けるのは簡単ではないのが現実です。
その一方で、商業誌には編集者の助言、出版社の信用、既存読者への露出という大きな価値があります。
現在は商業誌で名前を知ってもらい、同人誌、ダウンロード販売、支援サイトで収益を伸ばす作家も増えました。
商業誌が作家の音楽を広めるCDなら、同人誌やダウンロード販売はファンが直接お金を払うライブ会場。
雑誌掲載だけをゴールにするのではなく、そこで出会った読者を次の作品へつなげていく。
それが現在のエロ漫画家にとって、現実的な活動方法のひとつになっています。
主な参考資料
COMITIA「編集王に訊く39 『COMIC LO』編集長 コミックハウス編集局長 Wさん」
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pixivision「最近きている“DL同人”って!? 作家と編集者に聞いてみた!」
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