2026年、ワールドカップがやってきます。
開催地はアメリカ、カナダ、メキシコ。
6月11日に開幕し、7月19日の決勝まで、世界中がしばらくサッカーの話で少しうるさくなる季節です。
代表メンバー、フォーメーション、スタメン予想、誰をトップに置くか、誰を中盤に置くか。
そういう話は、サッカーが好きな人ほどやたら熱くなります。
むしろ本番の試合より、その前に「あいつは入るだろ」「いや、そこは違うだろ」とあーだこーだ言っている時間の方が楽しかったりする。
ブレイキングダウンも、試合そのものよりオーディションの揉め方で盛り上がっている瞬間がありますが、代表選考もあれに近いものがあります。
誰を選ぶか。
誰を外すか。
そして、なぜそこに置くのか。
そしてそれを
日本の性にまつわるエトセトラな人達でやったらどうなるのか?
AV、官能文学、出版、深夜番組、写真、サブカル、テレビの片隅に残った妙な記憶。
日本の夜を作ってきた人たちを、サッカー日本代表のベストイレブン風に並べてみたら、思った以上に濃いチームができてしまいました。
もちろん、これはランキングではありません。
偉い順でも、売れた順でも、単なる知名度順でもない。
ゴール前に立つ人がいて、最終ラインで文化の厚みを支える人がいて、中盤で業界の仕組みを変えた人がいて、前線で時代の空気をまとって走った人がいる。
エロは個人競技に見えて、意外とチームスポーツなのかもしれません。
というわけで今回は、性にまつわる日本代表ベストイレブン。
フォーメーションは4-2-3-1。
かなり濃い試合になりそうです。
基本フォーメーションは4-2-3-1
今回のフォーメーションは、4-2-3-1にしました。
先に言っておくと、これは「誰が一番すごいか」を決めるランキングではありません。
単純な知名度順でも、売上順でも、ネットで名前をよく見る順でもありません。
サッカーのポジションに置き換えた時に、その人が日本の性にまつわるエトセトラの中で、どんな役割を果たしてきたかを基準にしています。
前線に置くのは、時代の表側に出て、多くの人の記憶に残った人たちです。
作品や番組の顔になった人。名前そのものが、ある時代の空気と結びついている人。
サッカーで言えば、ゴール前で目立つ人たちです。
トップ下には、自分だけが目立つというより、周りを動かし、作品や人物をひとつの流れにしてしまう人を置きます。
前線にパスを出す人。
空気を作る人。
時には、試合そのものを自分のペースに変えてしまう人です。
両サイドには、時代の空気をまとって外側から切り込んでくる人を置きます。
中心にどっしり構えるというより、テレビ、出版、サブカル、世間の視線の間を走り抜けて、気づいたら多くの人の記憶に残っているタイプです。
中盤の底には、業界の仕組みや見方を変えた人を置きます。
派手にゴールを決めるわけではないけれど、そこにいることで全体の流れが変わる。
作り方、売り方、語り方、見せ方。
そういう部分に影響を与えた人たちは、前線よりも少し後ろから試合を動かす方がしっくりきます。
最終ラインには、性を文化として支える人たちを置きます。
ここで大事なのは、派手さよりも受け止める力です。
官能、テレビ、文学、女の性、笑い、下世話さ、怖さ、湿度。
そういう面倒なものを後ろで支えられる人がいないと、このチームはただの派手なエロ選抜になってしまいます。
そしてゴールキーパーには、このチームの視野を広げてくれる人を置きます。
性の話は、気を抜くとすぐに分かりやすい欲望や、目立つジャンルだけに寄ってしまう。
でも、表に出やすい性だけが性ではありません。
語られにくかった欲望、隠されてきた感情、簡単に笑いにできない領域も含めて、やっと「性にまつわる日本代表」と呼べるはずです。
つまり今回の選考基準は、かなりざっくり言うとこうです。
・前線は、時代の顔になった人
・トップ下は、周りを動かして現象を作った人
・サイドは、世間やサブカルの空気をまとって走った人
・中盤の底は、業界や見方の仕組みを変えた人
・最終ラインは、性を文化として支える厚みを持った人
・ゴールキーパーは、代表チームの視野を狭くしないための人
この基準で並べていくと、かなりクセの強い4-2-3-1になります。
爽やかな代表戦というより、深夜番組と古本屋とビデオ棚と酒場の会話が、なぜか同じピッチに集まってしまった感じです。
では、ここからスターティングイレブンを発表していきます。
いよいよ発表!!性にまつわる日本代表ベストイレブン

GK:伊藤文學
ゴールキーパーは伊藤文學。
この人を最後尾に置いた瞬間、チーム全体の見え方が変わります。
性文化を語る時、どうしても異性愛のAVや男性目線のエロに偏りがちです。けれど、性はそんなに単純なものではありません。男と女だけでもないし、見る側と見られる側だけでもない。隠されてきた欲望、言えなかった感情、社会の端に追いやられてきた言葉も、性文化の大事な一部です。
伊藤文學は、そこを守る存在です。
ゴール前に立っているというより、チーム全体に対して「性を狭く見るなよ」と静かに言っている感じがあります。
派手なセーブを連発するタイプではありません。
ただ、彼がいないと代表チームが一気に薄っぺらくなる。
異性愛AVだけに寄りすぎたシュートを、がっちりキャッチする守護神です。
日本初の商業ベースの男性同性愛者向け雑誌『薔薇族』の創刊者・編集長。
長く語られにくかった男性同性愛者の悩みや声を、雑誌という形で表に出した人物。
ゲイ文化や性的マイノリティの歴史を語るうえで外せない編集者。
右SB:イジリー岡田
右サイドバックはイジリー岡田。
この人をサイドバックに置くのは、かなりしっくりきます。
本職のエロ表現者というより、深夜バラエティのピッチを駆け上がり、エロを笑いに変えて、茶の間ギリギリのラインまで運んでくる特殊な選手です。
普通のサイドバックなら、縦に抜けてクロスを上げます。
でもイジリー岡田は違います。
右サイドを駆け上がりながら、なぜか空気を一回かき乱す。
相手ディフェンスも味方も一瞬「何を見せられているんだ」と止まる。
その隙にゴール前へ妙なボールが入る。
エロは真面目に語ると重くなり、ふざけすぎると下品になる。
そのあいだの変な場所を、深夜番組の速度で駆け抜けたのがこの人です。
右サイドから笑いのクロスを上げる。
でも、守備範囲は意外と広い。
お笑いタレント、ものまねタレント。
深夜番組『ギルガメッシュないと』などで知られ、テレビの中でエロと笑いを結びつけた存在。下ネタを芸として処理し、90年代深夜バラエティの記憶に強く残っている。
CB:山本晋也
センターバックの一角は山本晋也。
この人がいると、最終ラインにテレビの時代が入ってきます。
監督としての顔、テレビでの顔、そして性風俗や成人文化をどこか人間観察のように見ていた顔。単にエロを紹介するのではなく、そこにいる人間の滑稽さや哀しさ、社会の隙間まで見ようとしていた感じがあります。
センターバックに必要なのは、派手さよりも読みです。
相手の動きを読む。
空気を読む。
時代の流れを読む。
どこまで映していいのか、どこから笑いに変えるのか、その境界線を読む。
山本晋也は、その読みで守るタイプです。
前線のスターたちが暴れすぎた時も、後ろから「まあまあ、そういう人間もいるんですよ」と受け止めてくれる。そんな妙な安心感があります。
性をスキャンダルではなく、人間の営みとして見せる守備職人です。
映画監督、タレント、リポーター。
成人映画やテレビ番組を通じて、夜の街や風俗の世界を大衆メディアに持ち込んだ人物。『トゥナイト』シリーズでのリポートでも知られ、テレビの中の性風俗語りに大きな存在感を残した。
CB:団鬼六
もう一人のセンターバックは団鬼六。
ここに団鬼六が入ることで、このチームは急に深くなります。
性文化代表をAVとテレビのノリだけで組むと、どうしても軽くなる。
そこで必要なのが、文学の重みです。
団鬼六は、官能をただの刺激としてではなく、言葉と構図と心理で組み上げた人です。
快楽だけではなく、支配、服従、羞恥、美意識、倒錯、執着。そういう面倒くさいものを、文学の側からピッチに持ち込んでくる。
センターバックとしては、かなり重いです。
足元にボールが来ても、すぐに蹴らない。
一度じっと見て、湿度を確かめてからパスを出す。
たぶん試合後のコメントも長い。
でも、その長さが必要な時代もある。
団鬼六がいることで、この代表はただのエロ選抜ではなく、性文化代表になる。
最終ラインに文学がいる。
これはかなり強いです。
『花と蛇』などで知られる官能小説家。
SM、羞恥、支配、美意識といった題材を、文学の言葉で描いた人物。
日本の官能文学を語るうえで、避けて通れない作家の一人。
左SB:岩井志麻子
左サイドバックは岩井志麻子。
この配置、かなり危険です。
しかし入れないわけにはいきません。
岩井志麻子が持ち込むのは、遊郭、女の性、因習、怖さ、笑い、下世話さ。きれいごとだけでは済まない女の欲望と、地方の湿った空気と、人間のどうしようもなさです。
左サイドでボールを持った瞬間、ピッチの空気が少し濃くなる。
明るいエロではない。
でも暗すぎもしない。
怖いのに笑える。
下世話なのに、妙に知性がある。
この人のすごいところは、性を語る時に被害者っぽさや清潔さだけに逃げないところです。女の性にも欲があり、毒があり、笑いがあり、みっともなさがある。その感じを、平然と左サイドから持ち上がってくる。
守備に戻っても強い。
相手がきれいごとで攻めてきたら、ぬるっと足を出してボールを奪いそうです。
左サイドに湿度を持ち込む選手。
このチームの裏テーマを背負っています。
『ぼっけえ、きょうてえ』で知られる作家。
ホラー、遊郭、女の性、地方の因習、人間の業を濃く描いてきた人物。
テレビ出演では、作家としての知性と下世話な語りが混ざった独特の存在感も見せている。
DMF:高橋がなり
ボランチの一枚目は高橋がなり。
この人は、業界構造を変えたボランチです。
前線で派手にゴールを決めるタイプではありません。
でも、ボールの流れを変える。
選手の配置を変える。
観客の見方を変える。
ビジネスの仕組みごとピッチを作り替える。
性文化において、作品そのものだけでなく、売り方、見せ方、作り方、組織の動かし方を変えた人は強いです。
ボランチというのは、地味に見えてチームの心臓です。
高橋がなりは、まさにそこに置きたい。
前線のタレントをどう活かすか。
企画をどう回すか。
業界の空気をどう変えるか。
そういう部分で、かなり強烈な縦パスを入れてくる選手です。
ただし、パスの球質はかなりクセが強い。
優しいふんわりパスではなく、受け手が覚悟していないと足元で爆発するタイプです。
ソフト・オン・デマンドの創業者として知られる実業家、元AV監督。
テレビ制作の現場を経てAVメーカーを立ち上げ、セルビデオ時代のAV業界で大きな存在感を持った人物。
『マネーの虎』への出演でも知られ、AV業界外にも名前が広がった。
DMF:代々木忠
ダブルボランチのもう一枚は代々木忠。
高橋がなりが業界構造を動かすボランチなら、代々木忠は性の内側に潜っていくボランチです。
派手なゴールではなく、深いところから試合を作る。
欲望の表面だけではなく、その奥にある心理や関係性や、人間の弱さを見にいく。
この人を中盤の底に置くと、チームの重心が安定します。
性をただの商品として見るのではなく、人間の心身に関わるものとして扱う視点が入る。これは代表チームとしてかなり大事です。
高橋がなりがピッチを広げるなら、代々木忠はピッチの深さを作る。
片方が産業のダイナミズム。
片方が人間の内面。
このダブルボランチ、かなり濃いです。
濃すぎて、ハーフタイムのロッカールームが説教部屋みたいになるかもしれません。
AV監督、映画監督、プロデューサー。
アテナ映像などで活動し、長年にわたりAV制作の現場に関わった人物。
性を単なる刺激としてではなく、人間の内面や関係性と結びつけて語ってきた監督として知られる。
OMF:村西とおる
トップ下は村西とおる。
これはもう、ほぼ異論が出ないはずです。
トップ下に必要なのは、創造性、視野、意外性、そして前線を活かす力。
村西とおるは、その全部を持っています。
というより、ボールを持った瞬間に試合そのものを自分の番組に変えてしまうタイプです。
性文化における村西とおるは、ただの監督ではありません。
語り口、演出、キャラクター、時代の巻き込み方まで含めて、ひとつの巨大な現象です。
そして右ウイングに黒木香がいる。
ここがこのチーム最大の見どころです。
村西とおると黒木香。
これはもう、翼くんと岬くんです。
片方がボールを持てば、もう片方がそこにいる。
理屈を超えたワンツーが出る。
昭和の深夜が急にピッチへ降りてくる。
ただし、この黄金コンビは爽やかな青春サッカーではありません。
実況も解説も、途中で言葉を選び始めるタイプの黄金コンビです。
トップ下としての村西とおるは、良くも悪くも試合を支配します。
ボールを持ちすぎる。
語りすぎる。
でも、そこからしか出ないパスがある。
このチームの10番です。
「AVの帝王」と呼ばれたAV監督、実業家。
1980年代のAV業界で強烈な存在感を放ち、監督自身の語り口やキャラクターも含めて時代の記号になった人物。
その半生は『全裸監督』でも広く知られるようになった。
左WG:飯島愛
左ウイングは飯島愛。
前線に置く理由は、単にAV女優だったからではありません。
飯島愛は、AVという枠を越えて、テレビ、出版、タレント文化、平成の空気まで走り抜けた存在です。
左サイドでボールを持つと、急にピッチがテレビ番組になる。
でも、ただ明るいだけではない。
どこか寂しさや危うさもある。
飯島愛の強さは、エロを自分の言葉に変えたところにあります。
見られる側で終わらず、語る側にも回った。
笑いにもしたし、痛みもにじませた。
ウイングとしては、突破力だけでなく表情があるタイプです。
派手に縦へ抜ける時もあれば、急に内側へ切れ込んで、こちらの胸に妙な余韻を残す。
明るいのに、軽くない。
テレビ的なのに、どこか生身。
この代表に、平成のリアルな体温を持ち込む左ウイングです。
AV女優として活動した後、タレントとしてテレビでも広く活躍した人物。
自伝的エッセイ『プラトニック・セックス』でも大きな話題を集めた。
AV出身者がテレビや出版の世界へ広がっていく流れを象徴する存在の一人。
右WG:黒木香
右ウイングは黒木香。
この配置は、村西とおるとの関係を考えたら外せません。
黒木香は、ただの出演者ではなく、時代の記号になった人です。
個性、言葉、立ち居振る舞い、知性と奇妙さ。
当時のAVやテレビ的なエロの中で、かなり異物感のある存在でした。
右サイドでボールを持つと、普通のクロスは上げません。
何かを語り始める。
相手も味方も聞いてしまう。
その間に村西とおるがトップ下から寄ってくる。
そして、あの黄金コンビが発動する。
翼くんと岬くんのようなワンツー。
ただし、こちらは健全な校庭ではなく、昭和の深夜とビデオ文化のピッチです。
黒木香の面白さは、エロの中に知性とキャラクター性を持ち込んだところにあります。
単に見られる存在ではなく、見る側の価値観をかき回す存在だった。
右サイドから、時代の常識をえぐるウイングです。
1980年代に注目を集めた元AV女優。
村西とおる作品への出演や、独特の語り口、知的で強いキャラクター性で知られた人物。
AVだけでなくテレビ番組にも出演し、当時のメディアに強い印象を残した。
CF:加藤鷹
センターフォワードは加藤鷹。
この人をCFに置かずに、誰を置くのかという話です。
AV女優はフォワード枠。
それは確かに華があります。
でも、このチームの最前線の中央には、男優として圧倒的な知名度を持つ加藤鷹が必要です。
センターフォワードというのは、最終的にゴール前で仕事をする人です。
どれだけ中盤が作っても、最後に決める人がいないと試合にならない。
加藤鷹は、その決定力の象徴みたいな存在です。
しかも、ただゴールするだけではない。
職人感がある。
テクニックが語られ、名前そのものが一種のブランドになり、男優というポジションの知名度を一気に押し上げた。
この代表の最前線に立つと、妙な説得力があります。
村西とおるからスルーパスが出る。
黒木香が右から絡む。
飯島愛が左から揺さぶる。
最後に加藤鷹が中央にいる。
濃い。
濃すぎる。
でも、代表の9番としてはこれ以上ない配置です。
元AV男優、タレント、YouTuber。
長年の出演歴と「ゴールドフィンガー」の異名で広く知られた人物。
AV男優という職業そのものを、一般層にも認識させた代表的な存在の一人。
選考理由の補足
ここまで11人を並べてみたが、あくまでこれは知名度ランキングではない。
AVの世界で有名だから前線。
文学の人だから後ろ。
テレビの人だからサイド。
そんなに単純に分けたわけでもない。
基準にしたのは、その人が「性にまつわる日本の記憶」の中で、どんな残り方をしているかだった。
加藤鷹をセンターフォワードに置いたのは、AV男優という本来は裏側に回りやすい役割を、世間に見える名前へ押し上げた人だからだ。
最後に中央で仕事をする人、という意味ではかなり分かりやすい。
村西とおるをトップ下に置いたのは、本人だけで完結しないからだ。
出演者、言葉、演出、時代の空気まで巻き込んで、周りごとひとつの現象にしてしまう。
自分で点を取りに行くというより、ピッチ全体を自分の番組に変えてしまう感じがある。
黒木香を右に置いたのは、村西とおるとの並びを外せなかったからだ。
あの2人は、爽やかな意味ではまったくないが、妙にコンビ感が強い。
翼くんと岬くんに例えるにはだいぶ湿度が高いけれど、右サイドに置いた瞬間、昭和のビデオ文化の記憶が一気に走り出す。
飯島愛を左に置いたのは、AVという場所からテレビ、出版、タレント文化へ抜けていった人だからだ。
中心にどっしり置くより、外側から時代の空気をまとって切り込んでくる感じがある。
明るさもある。危うさもある。平成のテレビの匂いもある。
その混ざり方が、左サイドに置きたくなる理由だった。
中盤の底は、表に出るスターというより、業界や性の見方を動かした人を置いた。
高橋がなりは、作り方、売り方、見せ方を含めてAVの構造を動かした人。
代々木忠は、性をただの刺激ではなく、人間の内側や関係性まで見ようとした人。
この2人が後ろにいると、前線の濃さだけで終わらない。
最終ラインに置いた4人は、性をAVだけに閉じ込めないための人たちだ。
山本晋也には、テレビと風俗と人間観察の匂いがある。
団鬼六には、官能文学の言葉と重みがある。
岩井志麻子には、女の性、因習、怖さ、笑い、下世話さがある。
イジリー岡田には、深夜バラエティがエロを笑いに変えていた時代の空気がある。
このあたりを入れないと、性にまつわる日本代表と言いながら、ただのAV寄りの有名人選抜になってしまう。
そして最後尾に伊藤文學を置いたのは、この代表を異性愛中心の話だけで終わらせないためだ。
日本の性にまつわるエトセトラを並べるなら、見られやすい欲望だけでなく、語られにくかった欲望や、隠されてきた言葉も入っていないと片手落ちになる。
そう考えると、この11人はかなりバラバラだ。
同じ業界の人だけで固めたわけでもない。
同じ時代の人だけを並べたわけでもない。
本来なら同じ作戦ボードの前に集まることもない人たちばかりだ。
でも、だからこそ並べてみると妙な引っかかりが出る。
「そこに置くのか」
「いや、その人は外せないだろ」
「そのポジションで見ると急にしっくりくるな」
こういう企画は、正解を出すためのものではない。
本来なら同じ場所に並ばない人たちを、あえて同じ布陣に置いてみる。
その瞬間に、「いや、そこは違うだろ」と言いたくなる人が出てくる。
たぶん、その反応まで含めてこの遊びなのだと思う。
日本の性にまつわる名前は、AV、文学、テレビ、出版、写真、サブカルのあちこちに散らばっている。
それを無理やりひとつのピッチに集めてみたら、変にまとまらない。
でも、まとまらないからこそ、眺めていて面白い。
今回のベストイレブンは、たぶんそのくらいの温度で見るのがちょうどいい。
そしてピッチがビッチに見えたなら眼科かメガネ屋に行った方が良い。
私は来週行く予定だ。
ベンチ入りメンバー

蒼井そら
ベンチに蒼井そらがいると、海外展開のカードを切れる感じがあります。
日本のAV女優という枠を越えて、アジア圏での知名度まで含めると、かなり強い存在です。
後半、試合の流れを変えたい時に投入したいスーパーサブ。
ピッチに入った瞬間、急に国際親善試合みたいな空気になります。
元AV女優、タレント、女優。
2000年代を代表する人気AV女優の一人で、日本だけでなくアジア圏でも高い知名度を持った。
AV出身者の知名度が海外まで広がる流れを象徴する存在として知られる。
及川奈央
及川奈央は、AVからタレント、女優的な方向へ広がった存在としてベンチに置きたい選手です。
エロの世界から出発しながら、その後の活動で別の見られ方も獲得していく。
これは性文化代表にとって重要なルートです。
後半に入れると、試合が少し落ち着くタイプ。
前線の色気とテレビ的な品の良さをつなぐ選手です。
元AV女優、女優、タレント。
AV出演で注目を集めた後、テレビやドラマ、舞台など活動の幅を広げた人物。
AVから一般芸能の世界へ越境していった存在の一人として名前が挙がることが多い。
しみけん
しみけんは、現代的な意味での男優枠として外せません。
加藤鷹がレジェンドの9番なら、しみけんは現代的な解説力と発信力を持つ控えFW。
プレーだけでなく、語れる。
そして、性を明るく情報化する力があります。
後半から入って、急に戦術ボードを使って説明し始めそうな選手です。
AV男優、タレント、YouTuber。
長年にわたってAV出演を続け、男優として高い知名度を築いた人物。
近年はYouTubeやメディア出演を通じて、性にまつわる話題をわかりやすく発信している。
チョコボール向井
チョコボール向井は、名前の時点でベンチにいるだけで強いです。
詳しい説明をしなくても、もう存在感があります。
こういう選手は代表に必要です。
スタメンで90分出すと試合が濃くなりすぎる。
でも、ベンチにいると安心する。
延長戦で何かが起きそうな空気を持っています。
元AV男優、タレント。
90年代から2000年代にかけて強烈な芸名とキャラクターで広く知られた人物。
AV男優の中でも、とくに名前のインパクトが強く、記憶に残っている人が多い存在。
末井昭
末井昭は、出版とサブカルの側から入れたいベンチメンバーです。
性をただの裸や映像としてではなく、雑誌、編集、時代の空気、怪しさ込みで扱うなら、この人の存在はかなり大きい。
ピッチに入ると、急に本屋の奥の棚みたいな匂いがします。
明るいスポーツ会場に、少し紙とインクと危ない広告の気配が混ざる。
こういう選手がベンチにいると、チームに奥行きが出ます。
編集者、作家。
セルフ出版、のちの白夜書房の設立に参加し、元・白夜書房取締役編集局長として『写真時代』『パチンコ必勝ガイド』などを手がけた。
エロ、サブカル、雑誌文化がまだ紙の上でギラついていた時代を語るうえで外せない人物。
荒木経惟
荒木経惟は、写真の側から性と生を持ち込む存在です。
エロというより、生々しさ。
欲望というより、視線。
きれいなものと危ういものを、同じフレームに入れてしまう力があります。
写真家枠で考えると、篠山紀信や加納典明も当然候補に入る。
篠山紀信には、スターや時代そのものを写真にしてしまう強さがある。
加納典明には、もっとギラついた時代性や、挑発としてのエロスがある。
そのうえで荒木経惟を置きたくなるのは、エロスだけを撮っている感じがしないからだ。
裸や欲望のすぐ隣に、生活があり、街があり、死があり、どうしようもない人間くささがある。
きれいな官能写真というより、東京の部屋の空気ごと写っているような感じがある。
今回のベストイレブンは、ただ“エロいものを撮った人”を選ぶ企画ではない。
性にまつわる記憶や、時代の湿度まで含めて並べたい。
そう考えると、写真家枠ではやっぱり荒木経惟をベンチに置いておきたくなる。
もし後半に投入されたら、試合のテンポは遅くなるかもしれません。
でも、急にピッチ全体が写真集の一ページみたいになる。
攻撃力というより、空気を変える交代カードです。
写真家。
ヌードや私写真をはじめ、生と性が近い場所にある作品を数多く発表してきた人物。
日本の写真表現の中で、エロスと日常、欲望と死を強く結びつけた存在として知られる。
ぐんぴぃ
そしてベンチの一番端に、ぐんぴぃが座っています。
性産業の人でもない。
官能表現の作り手でもない。
この並びに入れると、明らかにひとりだけジャージの着方が違う。
でも、なぜか外せない。
「童貞」という言葉を、令和のネット空間で妙にキャラクター化してしまった存在。
本人がピッチに出るかどうかは分かりません。
たぶん監督も最後まで迷う。
というより、本人もなぜ呼ばれたのか少し分かっていない顔をしている。
ただ、後半アディショナルタイム、ベンチの様子が一瞬カメラに抜かれた時、SNSで一番拡散されるのはたぶんここです。
試合には出ていない。
でも、翌朝のネットニュースにはいる。
そういう枠も、現代の代表には必要なのかもしれません。
お笑いコンビ「春とヒコーキ」のメンバー。
街頭インタビューでの「バキバキ童貞」という一言がネットミーム化し、“バキ童”として広く知られるようになった。
2025年末にYouTubeで恋人ができたことと“卒業”を報告。
選外にも強烈なメンバーが多すぎる
この企画で難しいのは、選び始めるとキリがないことです。
性文化というフィールドは広すぎます。
AVだけでもスターは多い。
官能文学にも写真にも出版にも、まだまだ入れたい人がいる。
テレビの深夜枠やサブカルまで広げたら、代表どころかJリーグが作れます。
しかも、時代によって評価が変わる。
昭和のエロ、平成のAV、令和のネットミームでは、戦っているピッチが違います。
だから今回は、単に知名度順ではなく、ポジションごとの役割で組みました。
最前線には加藤鷹。
トップ下に村西とおる。
両翼に飯島愛と黒木香。
中盤の底に高橋がなりと代々木忠。
最終ラインに山本晋也、団鬼六、岩井志麻子、イジリー岡田。
最後尾に伊藤文學。
こうして見ると、かなりバランスがいい。
いや、バランスがいいのかは分かりません。
濃度が高すぎて、試合開始10分で審判が水を飲みに行きそうです。
あとがき

こうして並べてみると、今回やっていることは、昔の2chやなんJでよくあった「打線組んでみた」に近い。
歴代の漫画家で打線を組む。
好きな菓子パンで打線を組む。
なぜか強そうな駅名で打線を組む。
バラバラのものを無理やり同じ並びに置いて、「いや、四番はそれじゃないだろ」みたいに言い合う。
あの時間がいちばん楽しい。
今回の性にまつわる日本代表も、たぶんそれに近い。
AVの人がいる。
官能文学の人がいる。
深夜番組の人がいる。
出版の人がいる。
写真の人がいる。
サブカルの端っこにいる人もいる。
普通に考えたら、同じ更衣室に入れた瞬間に空気が濃くなりすぎて、誰かがそっと窓を開ける。
でも、そういう無茶な並びだからこそ、見ている側も勝手に口を出したくなる。
「その人は前線じゃないだろ」
「いや、そこは守備に置くからいいんだろ」
「ベンチにいるだけで強いだろ」
こういう話は、正解がない方が盛り上がる。
性文化なんて大きな言葉を使うと急にかしこまるけれど、実際にはもっと雑な記憶の寄せ集めでもある。
笑った記憶。
驚いた記憶。
変なものを見てしまった記憶。
よく分からないのに、名前だけ妙に残っている人。
そういうものを、今回はサッカーの布陣に並べて遊んでみた。
そして、どれだけ濃いメンバーを選んでも、誰かは必ず外れる。
代表選考とは、いつだって残酷だ。
外れるのは……カズ、三浦カズ。









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