事の発端は、ブログに届いていた一件のコメントだった。
普段からスパムコメントはそれなりに来るので、明らかな宣伝ならそのまま消してしまうのだが、今回は書いてあることがちょっと変だった。
「Googleで『清酒東京大阪出張サービス』と検索してください。」
東京都全域・大阪市全域(自宅・ホテル対応可能)
清酒?
最初に読んだときは、酒の配達サービスか何かだと思った。
ただ、酒を届けるサービスにしては「自宅・ホテル対応可能」という書き方が妙だし、店のURLすら書かずにGoogleで検索してくれというのも変だ。
気になったので、そのまま「清酒東京大阪出張サービス」で検索してみた。
すると、酒とはまったく関係のないものが出てきた。
清酒東京大阪出張サービスとは?

検索結果に出てくる内容を見ると、「清酒東京大阪出張」は東京と大阪を中心に、女性をホテルや自宅などへ派遣するとしている出張型の風俗サービスだった。
実際にネット上へ投稿されている宣伝では、自ら「デリバリーヘルス」と名乗ったり、ホテルや自宅への女性派遣を案内したりしている。
別の投稿には学生系、OL、人妻など、女性のタイプまで並べられていた。
つまり、「清酒東京大阪出張サービス」の正体は、日本酒の配達ではなく東京・大阪の出張風俗系サービスへの誘導とみてよさそうだ。
では、なぜそんなものがうちのブログのコメント欄に来たのか。
検索していると、どうも他のサイトにも同じような書き込みがかなりあるようだった。
他のサイトにも書き込まれているようなので調べてみた
どんなサイトに掲載されているのかも気になった。
風俗やアダルト関係のサイトを中心に宣伝しているのか、それともジャンルは関係ないのか。
検索で出てくるものをいくつか見てみた。
ゲーム系まとめサイト
まず見つかったのがゲーム系まとめブログ。
パワプロ、ポケモン、ドラクエなどの記事コメント欄に、記事とはまったく関係なく「清酒東京大阪出張」の宣伝が投稿されている。
投稿内容には「私の茶荘の名前は『清酒東京大阪出張』です」とあり、「小悠」という名前、Gleezy、LINE、Telegram、そして「tokyosake520.com」というフォーラムのアドレスなどがまとめて書かれていた。
一つの記事にたまたま書き込まれたわけではなく、複数の記事で同じ内容が見つかる。
ランニングコースの口コミ
次に見つかったのが、ランニングイベントやランニングコースを掲載しているサイト。
ここではランニングコースを星5で評価したうえで、その口コミ本文が「清酒東京大阪出張」の宣伝になっていた。
豊洲ぐるり公園、隅田川、葛西臨海公園、大阪の山田池公園など、複数のコースにほとんど同じ内容が投稿されている。
ランニングコースを探しに来た人に、突然出張風俗を宣伝していることになる。
スポーツメンバー募集サイト
さらに分かりやすかったのが、スポーツチームのメンバー募集サイト。
「清酒東京大阪出張」という名前で、ラグビーチームとして登録された募集ページが見つかった。
ページ上では普通のスポーツチームのように見えるのだが、募集内容を読むと東京・大阪への女性派遣サービスの説明になっている。
さらに検索すると、ラグビーだけではなく、草野球やゴルフなど別ジャンルでも同じような募集ページが出てくる。
スポーツの種類はどうでもよく、募集ページそのものを広告スペースとして使っているように見える。
ゲームや教育関係の掲示板にも
ほかにも、ゲーム関係のフォーラムや教育関係の掲示板などから同じ「清酒東京大阪出張」の宣伝が出てきた。
ここまで来ると、掲載先のジャンルに合わせて広告を出しているとは考えにくい。
迷路亭愛ゲーム、スポーツ、ランニング、教育……ここまでバラバラなら、客層より「書き込める場所かどうか」を見てそうね。
掲載されているサイトに傾向はあるのか?


確認できた掲載先をざっくり並べると、ゲーム、競馬、ランニング、ラグビー、ゴルフ、教育、掲示板など、かなりバラバラだった。
アダルトサイトや風俗関係のサイトに集中しているわけではない。
逆に共通しているのは、コメント欄、口コミ、掲示板、レビュー、メンバー募集など、一般ユーザーが文章を投稿できる場所が多いこと。
風俗に興味がありそうな人が集まるサイトを選んでいるというより、投稿できる場所を見つけて書き込んでいると考えた方が自然だと思う。
うちにコメントが来たのも、エロバラだから狙われたというより、単純にコメント欄があったからなのかもしれない。
書き込みは数カ月にわたって続いている
もう一つ気になったのが、投稿された時期。
ゲーム系ブログでは2026年2月に同じ宣伝が確認できる。
スポーツメンバー募集サイトでは4月、ランニングコースの口コミでは6月にも同じ系統の投稿が残っている。
一時期だけ大量に投稿されて終わったものではなく、少なくとも2026年に入ってから数カ月にわたって投稿を続けている。
ランニングサイトでは同じアカウントが短時間に複数のコースへほぼ同じ宣伝を書き込んでいるため、一件ずつサイト内容を読んで丁寧に宣伝しているような感じでもない。
関係者が作成したと思われるYouTubeチャンネル
さらに調べていると、YouTubeにも関連すると思われるチャンネルが見つかった。
投稿されているのは、女性が屋外を歩いている様子などを撮影した短い動画。
動画だけを見ると、何のためのチャンネルなのかはほとんど分からない。
ところが説明欄には、
東京大阪の日本酒お届けサービス
ホテル/自宅への出張サービス可
さまざまなタイプの日本の女の子
などと書かれている。
さらに中国語でも、ホテルや住宅への「外送」が可能で、女性は日本人だと案内されている。
連絡先として掲載されているTelegramやGleezyのIDも、ほかのサイトに投稿されている「清酒東京大阪出張」の宣伝と共通している。
そのため、このYouTubeチャンネルも同じサービスの宣伝用として使われている可能性はかなり高そうだ。
動画の内容からすると、在籍女性の紹介用として掲載しているものと思われる。
ただ、今は生成AIでかなり自然な人物動画まで作れる時代。
映っている女性が本当に実在するのか、実際にこのサービスに在籍している本人なのかは、動画だけでは判断できない。
もちろん普通に撮影した実在女性の映像である可能性もあるが、「動画があるから写真どおりの女性が必ず来る」と考える材料にはならないだろう。
実際にサイトも見てみた


宣伝を追っていくと、「tokyosake520.com」というサイトも出てくる。
怪しいサイトなので少し嫌だったが、どんなものなのか実際に見てみた。
一般的な日本のデリヘル店を想像していると、かなり雰囲気が違う。
店名が大きく表示され、その下に料金表や女の子の一覧が並んでいるようなサイトではなく、見た目は昔ながらの掲示板に近い。
使われているのも、中国で広く使われてきた「Discuz!」という掲示板システム。
その掲示板の中に東京や大阪の女性を紹介するスレッドが並んでいるような作りだった。
日本語にはなっているものの、中国語もところどころ残っている。
女性の紹介も、日本の風俗店によくあるキャスト一覧というより、一人ずつ掲示板に紹介スレッドを立てているような感じ。
連絡方法としてLINEだけでなく、Telegram、Gleezy、WeChatなども使われていた。
見た印象としては、日本の一般的なデリヘル公式サイトというより、中国語圏向けの掲示板を使って東京・大阪の女性を紹介しているサイトに近い。



よくある日本の風俗サイトとは、見た目からしてかなり違うわね。掲示板そのものをお店代わりに使っている感じ。
「小悠」という名前もよく出てくる
宣伝を追っていると、「小悠」という名前も何度も出てきた。
複数のサイトに投稿された文章では、「私は小悠と申します」「私の茶荘の名前は『清酒東京大阪出張』です」と名乗っている。
ほかにも、予算や好みを伝えれば「小悠」が女性を提案するといった説明がある。
実在する一人の人物なのか、担当者が共通で使っている名前なのか、それとも運営上の名前なのかまでは分からない。
ただ、「清酒東京大阪出張」と「小悠」がセットになった投稿が複数あるのは確認できた。
それにしても、なぜ「清酒」なのか?
ここは調べてもよく分からなかった。
サービス内容と日本酒には何の関係もない。
一方で、宣伝には「茶荘」「外送」といった言葉が出てくる。
台湾などの中国語圏では「外送茶」という言葉が使われており、ここでいう「茶」は飲み物ではない。
女性がホテルや自宅など指定された場所へ出向く性的サービスを表す隠語として使われる言葉で、「茶行」もこうしたサービスの業者を指す言葉として使われている。
今回の宣伝でも自分たちを「茶荘」と呼んでいるので、中国語圏で使われているこうした風俗用語とのつながりはありそうだ。
ただ、それでもなぜ「茶」ではなく「清酒」という名前にしたのかは分からない。
茶なのに清酒。
名前の由来について説明しているものは見つからなかった。
なぜURLではなくGoogleで検索させるのか?


最初にうちへ来たコメントで、もう一つ変だったのがこれ。
「Googleで『清酒東京大阪出張サービス』と検索してください。」
普通に考えれば、店を宣伝したいなら公式サイトのURLを書けば済む。
ところが、この「Googleで検索してください」という誘導そのものが、ほかの場所にも繰り返し投稿されている。
理由として考えられるのが、コメントや掲示板のスパム対策。
ブログや掲示板では、URLを含んだ投稿を自動的に保留したり、リンク数の多い投稿をスパム扱いしたりする設定が使われていることがある。
URLを書かずに「この言葉で検索してください」としておけば、ただの文章として投稿できる場所は増える。
さらに実際に「清酒東京大阪出張」で検索すると、サービス側のサイトだけではなく、宣伝を書き込まれた無関係なページまで検索結果に出てくる。
これが検索順位を狙って意図的に行われているのかまでは分からない。
ただ、URLを直接貼るのではなく「清酒東京大阪出張サービス」という言葉をGoogleで検索させることを意識しているのは間違いなさそうだ。
【挿絵3】指示:成人女性が検索結果を調べている場面。ブログ、掲示板、口コミ、スポーツ募集など複数のサイトへ同じ言葉が広がっているイメージ。モニターは本人側を向いた自然な配置にし、画面をこちらへ見せる不自然な構図は禁止。4:3横長、文字・番号・透かしなし。



URLを書かずに「Googleで検索して」とだけ残すのは、今回のスパムでかなり特徴的なところね。
サイトにウイルスが仕込まれている感じは?
怪しいサイトなので、ここが気になる人もいると思う。
実際に表示して確認した範囲では、ページを開いた途端にファイルがダウンロードされたり、偽のウイルス警告が表示されたり、別サイトへ強制的に飛ばされたりといった露骨な動きはなかった。
少なくとも普通にページを見ただけなら、特に変わった挙動は見られなかった。
ただ、それと「安心して利用できるサービスか」は別の話。
サイトや広告ではTelegram、LINE、Gleezy、WeChatなど外部の連絡手段へ誘導している。
興味本位で連絡したり、個人情報や身分証の画像などを送ったりするのは避けた方がいい。
この記事からもサイトへの直接リンクは貼らないことにする。
日本で営業するなら届出が必要
日本で女性をホテルや自宅へ派遣する「派遣型ファッションヘルス」に当たる営業を行う場合、無店舗型性風俗特殊営業として営業開始の届出が必要になる。
警視庁も、派遣型ファッションヘルスを無店舗型性風俗特殊営業の1号営業として案内しており、営業開始届出書や営業方法を記載した書類などを必要書類としている。
今回確認した宣伝では、自らデリバリーヘルスと名乗り、ホテルや自宅への女性派遣を案内している。
一方で、スパムコメントやサイトを見ただけでは、日本でどのような事業者が運営しているのか、必要な届出を行って営業しているのかまでは分からなかった。
そのため、無許可営業だと断定することはできない
と言うかまあ…アレだと思う。
清酒東京大阪出張サービスについて分かったこと
ブログのコメント欄に突然、
「Googleで『清酒東京大阪出張サービス』と検索してください。」
と書かれていたので、最初は酒の配達サービスか何かだと思った。
調べてみると、実際には東京・大阪で女性をホテルや自宅などへ派遣するとしている、デリヘル系の出張風俗サービスへの誘導だった。
さらに検索すると、ゲームブログ、ランニングコース、スポーツチーム募集、教育関係の掲示板など、サービスとは何の関係もない場所にまで同じような宣伝が残っている。
YouTubeには在籍女性の紹介用と思われる動画まであり、その説明欄に掲載された連絡先も、各地にばらまかれている「清酒東京大阪出張」の宣伝と共通していた。
掲載先を見る限り、特定ジャンルを狙っているというより、コメントや掲示板など投稿できる場所へ広く書き込んでいるように見える。
今回うちに届いたコメントも、その中の一つだったのだろう。
現状の情報から言えるのは、運営実態や日本国内での営業届出状況がよく分からない出張風俗系サービスへ、無関係なサイトのコメント欄などを使って誘導しているということ。
無許可のデリヘルなのかどうかまでは確認できないので、そこは断定できない。
普段ならそのままスパムとして削除して終わりだったが、「清酒って何だ?」と検索してみたら思った以上にいろいろ出てきた。
そしてこの記事にたどり着いた人も、おそらくどこかのサイトで突然「清酒東京大阪出張サービス」という言葉を見かけて、何なのか気になって検索した人が多いのではないかと思う。
少なくとも、日本酒の配達ではなかった。



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