DMMとは何なのか|レンタルビデオ店からFANZA分離まで、巨大ネット企業の成り立ちをたどる

DMMという名前を聞いて、まず何を思い浮かべるだろうか。

DMM TV

DMMブックス

DMM GAMES

DMM FX

DMM英会話

オンラインクリニック

水族館。

サッカー

生成AI

etc…

そして、少し声を落として言えば、かつてのDMM.R18であり

現在のFANZA


今のDMMは、一言で説明しにくい会社になっている。動画配信の会社でもあり、電子書籍の会社でもあり、ゲームや金融や英会話まで抱える巨大ネット企業でもある。

ただし、その根っこまでたどると、かなり泥臭い。
最初から六本木のきれいなIT企業だったわけではない。地方のビデオ店から始まり、成人向けビデオの販売、流通、物流、通販、ネット配信を通って大きくなっていった会社だ。

DMMの歴史を雑にまとめると「レンタルビデオ店から始まった会社」と言われる。
これは間違いではない。

でも、それだけだと大事な部分が抜け落ちる。

DMMが本当に伸びた背景には、成人向けビデオという強烈な需要、それを全国へ流す販売網、在庫と発送をさばく物流、そして人に見られずに買えるネット通販・動画配信との相性があった。

この記事では、DMMとは何なのかを、成り立ちからDMM.R18、FANZA分離後の現在まで、少し夜の匂いも残しながらたどっていく。

CONTENTS

DMMの原点はレンタルビデオ店だけでは語れない

DMMの始まりとしてよく語られるのが、石川県のレンタルビデオ店だ。

創業者の亀山敬司氏は、若いころにアクセサリーの露天商などを経験し、その後、地元の石川県でレンタルビデオ店の経営へ入っていく。

この時点では、今のDMMの姿はまったく見えない。
地方にある映像ソフトの店。映画、アニメ、ドラマ、そして成人向けビデオが棚に並ぶ、平成前夜から平成初期にかけてのあのビデオ店の世界だ。

ただ、ここで大事なのは、DMMの源流を「レンタルビデオ店」とだけ見ると、かなり薄くなるということだ。

レンタルビデオ店は入口にすぎない。
その後のDMM前史で本当に重要なのは、成人向けビデオの販売、流通、物流、通販、ネット配信へと商売の形を変えていった部分にある。

つまり、DMMは単に「ビデオを貸していた会社」ではない。

ビデオを仕入れる。
売れる作品を見極める。
全国の店に流す。
在庫を動かす。
発送する。
ネットで売る。
ネットで配信する。

この流れを押さえた会社だった。

今のDMMを見ると、どうしてもIT企業の顔が目立つ。
でも、その下にはビデオテープ、段ボール、倉庫、営業、委託販売、在庫管理という、かなり現場寄りの商売がある。

DMMの成り上がりは、キラキラしたネット企業物語というより、地方のビデオ商売がインターネットに乗って巨大化していく話として見た方がわかりやすい。

成人向けビデオ販売へ移ったことでDMM前史は動き出した

DMMの前史で外せないのが、成人向けビデオの販売会社としての動きだ。

レンタルビデオ店は、基本的には来店客を待つ商売である。
店の周辺に住む人が来る。
棚に並んだ作品を選ぶ。
貸し出して、返却してもらう。
この範囲では、どうしても商圏に限界がある。

一方、販売や流通に回ると話が変わる。

自分の店に来る客だけではなく、全国のビデオ店へ商品を流せる。
作品の売れ行きを見ることができる。
どんなジャンルが強いか、どの棚が動くか、どの地域で需要があるかを商売としてつかめる。

ここで成人向けビデオは、かなり特殊な商品だった。

表立って語られにくい。
でも需要は強い。
店舗側も売れるなら置きたい。
ただし、売れ残りリスクは怖い。

この微妙な商品をどう扱いやすくするかが、DMM前史の商売の肝だった。

成人向けビデオは、ただ刺激が強いから売れたわけではない。
人間の欲望に直結していて、しかも繰り返し需要がある。
新作も出る。ジャンルも細かく分かれる。好みも人によって違う。

つまり、棚を広げれば広げるほど、売り場としての奥行きが出る。

地方のレンタルビデオ店から、成人向けビデオの販売・流通へ。
この移動が、DMMがただの町のビデオ店で終わらなかった大きな分かれ道だった。

「富山の薬売り方式」が全国のビデオ店を動かした

DMM前史でよく語られるのが、「富山の薬売り方式」と呼ばれる委託販売のような仕組みだ。

ざっくり言えば、全国のビデオ店に商品を送り、売れ残った分はあとで戻してもらう方式である。

これは店側にとって大きい。

普通に仕入れる場合、売れ残った在庫は店の負担になる。
特に成人向けビデオは、どの作品がどれだけ売れるか読みづらい。
パッケージの雰囲気、出演者、ジャンル、メーカー、地域性、店の客層によって動き方が変わる。

でも、売れ残りを返品できるなら、店側は置きやすい。

とりあえず棚に並べられる。
売れた分だけ商売になる。
外した時の痛みが減る。

販売側から見れば、全国に商品を流し込みやすくなる。
棚を取れる。
売れる作品の傾向が見える。
次に何を作るか、何を仕入れるか、どの店に何を送るかを考えやすくなる。

これは、かなり商売として強い。

成人向けビデオという、表に出しにくいが需要の強い商品を、店が扱いやすい形に変えた。
その結果、流通の規模が広がる。

ここには、のちのDMMらしさがすでにある。

欲望を見つける。
売り場を作る。
ユーザーに届く道を作る。
店側や利用者側の面倒を減らす。
そして、動いたデータを次の商売に使う。

DMMは、ただ成人向け商品を扱っていたから伸びたのではない。
売り方を作ったから伸びた。

この差はかなり大きい。

POSと物流がDMMの裏側を支えた

成人向けビデオの流通で重要だったのは、作品そのものだけではない。

  • どの商品が売れたのか。
  • どの店で売れたのか。
  • どのジャンルが強いのか。
  • どれだけ在庫が残ったのか。
  • どこへ送るべきなのか。

こうした情報をつかむことが、商売の強さにつながっていく。

DMM前史では、POSの導入も早かったとされる。
POSとは、店頭で商品が売れた時の販売情報を管理する仕組みである。

今なら当たり前に見えるかもしれない。
だが、ビデオテープの販売、しかも成人向け商品が多い世界で、売れ筋をデータで把握することにはかなり意味があった。

なんとなく売るのではなく、売れたものを見る。
売れないものも見る。
次に何を置くか、何を送るか、どう在庫を動かすかを判断する。

この感覚は、現在のネットサービスにもつながっている。

今の動画配信や電子書籍では、ランキング、検索、レビュー、関連作品、視聴履歴、購入履歴が当たり前のように使われている。
でも、その原型は、もっと泥臭い現場の売上管理や在庫管理にもあった。

さらに物流も大きい。

ネット通販や動画配信が始まる前から、DMMの源流には商品を扱う現場があった。
棚に置く。
箱に詰める。
発送する。
返品を処理する。
在庫を管理する。

DMMは、いきなり画面の中から生まれたIT企業ではない。
実物の商品をさばく力を持った会社が、ネットへ移っていった。

だから、ネット通販やオンラインレンタルに進む時も、単なるウェブサイト屋ではなく、裏側の現場まで含めて動かせた。

このあたりが、DMMの成り上がりを考えるうえでかなり重要だ。

成人向けビデオはネットと相性がよすぎた

成人向けビデオは、インターネットと相性がよかった。

理由は簡単だ。
人に見られずに探せるからである。

ビデオ店の成人向けコーナーへ行くのは、どこか気まずい。
棚の前に立つだけで、少し周囲が気になる。
店員にパッケージを渡す瞬間も妙な緊張がある。
地方なら、知り合いに会う可能性もある。

しかも、店頭の棚には限りがある。
都市部なら品ぞろえも多いが、地方では選択肢が少ないこともある。
自分の好みに合う作品を探すにも、店の棚に置いてあるものの中から選ぶしかない。

ネットは、この不便さを一気に崩した。

家から探せる。
人に見られない。
検索できる。
ジャンルで絞れる。
地方でも作品数にアクセスできる。
通販なら店に行かずに買える。
配信なら待たずに見られる。

これは成人向けコンテンツにとって、革命に近かった。

DMMはこの変化にかなり早く乗った。
レンタルビデオ店、成人向けビデオ販売、物流、通販という土台を持ったうえで、ネット配信へ進んだ。

つまり、DMMは「ネットで動画を売る会社」になったのではない。
すでに持っていた成人向け映像の商売を、ネットに移した。

ここが強かった。

ネットの画面だけを作るのではなく、作品、流通、会員、決済、検索、ランキング、販売導線をまとめて押さえていく。
DMMの巨大化は、この流れの中で進んだ。

1990年代後半、DMMはネット配信へ向かった

1990年代後半、インターネットはまだ今ほど当たり前ではなかった。

動画を見るにも回線は遅い。
画質も粗い。
パソコンも今ほど手軽ではない。
スマホもない。

それでも、成人向けコンテンツにとってネットは魅力的だった。

人に見られずに探せる。
店に行かなくていい。
カタログより細かく検索できる。
配信なら配送を待たなくていい。

DMMは、ここでインディーズAVのネット配信や通販へ進んでいく。
1999年には、現在のDMM.comにつながるデジタルメディアマートが設立される。

DMMという名前は、Digital Media Martに由来するとされる。
言ってしまえば、デジタルメディアの売り場である。

これは、かなりそのままだ。
ビデオ店の棚をネット上へ移す。
VHSやDVDの通販を画面から注文できるようにする。
さらに、映像そのものを配信する。

昔の成人向けビデオ店では、客は棚の前を歩いて作品を探していた。
DMMでは、画面の中で探すようになった。

その瞬間、売り場の広さは一気に変わる。

店舗の床面積ではなく、サーバーと検索と商品データの世界になる。
棚に置ける本数ではなく、登録できる作品数の世界になる。
店員と顔を合わせる売り場ではなく、ひとりでクリックして進む売り場になる。

DMMは、平成のビデオ棚を、インターネットの奥へ移した会社だった。

DMMはアダルトだけの会社ではなくなっていった

DMMは、長いあいだ成人向けのイメージが強かった。

それは当然だ。
DMM.R18は大きな成人向けプラットフォームだったし、ネットユーザーの記憶にも強く残っている。

だが、DMMはアダルトだけで止まらなかった。

動画配信。
電子書籍。
ゲーム。
金融。
英会話。
通販。
オンラインサロン。
アニメ。
オンラインクリニック。
水族館。
生成AI関連。

事業領域は、どんどん広がっていった。

ここで重要なのは、DMMが成人向け事業を急に捨てたわけではないということだ。
むしろ、成人向けコンテンツで育てた会員基盤、決済、配信、通販、物流、ネット広告、検索導線のノウハウを、別ジャンルへ広げていったと見た方が自然である。

動画を配信する仕組み。
本やコンテンツを売る仕組み。
会員にログインしてもらう仕組み。
ポイントや決済を回す仕組み。
ランキングやキャンペーンで動かす仕組み。

これらは、成人向けだけでなく、一般向けサービスにも使える。

DMMの多角化は、何の脈絡もなく事業を増やしただけではない。
ネット上に大きな売り場を作り、そこへいろいろな欲望を並べていった流れに近い。

見たい。
読みたい。
遊びたい。
学びたい。
稼ぎたい。
得したい。
こっそり楽しみたい。

DMMは、その欲望を次々にサービス化していった。

2018年、DMM.R18はFANZAへ変わった

大きな転機になったのが、2018年だ。

DMM.comは、成人向け事業を株式会社デジタルコマースへ承継した。
そして、DMM.R18はFANZAという名称へ変わった。

これは単なる名前変更ではない。

DMMという会社が一般向け事業を広げれば広げるほど、成人向け事業との距離感は難しくなる。

金融。
英会話。
医療周辺。
法人向けサービス。
採用。
海外展開。
スポーツ。
エンタメ。

こうした事業を広げる時、DMM.R18という名前が同じ看板の中に強く残っていると、企業イメージとしては扱いづらい場面が出てくる。

一方で、成人向け事業は成人向け事業として大きな需要がある。
捨てる理由はない。
むしろ、専門ブランドとして見せた方が強くなる。

そこで、一般向けDMMと成人向けFANZAの看板を分けた。

昼のDMM。
夜のFANZA。

そんなふうに分けて考えると、2018年の変更はかなりわかりやすい。

DMMは一般向けの巨大ネット企業として広がる。
FANZAは成人向けエンタメの売り場として残る。

同じ流れを持ちながら、表に出す顔を分けたのである。

FANZAという名前は「成人向け売り場」の印象を変えた

DMM.R18という名前は、かなりわかりやすい。

DMMの18歳以上向け。
DMMの成人向け売り場。
説明としては直球である。

一方、FANZAという名前は少し抽象的だ。
直接的なR18表記ではなく、成人向けエンタメのブランド名として見せている。

この変化は、地味だが大きい。

DMM.R18は、どうしても「DMM本体の中にあるアダルトコーナー」という印象になる。
FANZAになると、「成人向けエンタメの独立した売り場」として見えやすくなる。

中にある欲望が急に上品になったわけではない。
ただ、看板の出し方が変わった。

雑居ビルの古い看板から、少しデザインされた夜の入口へ変わるようなものだ。
奥にあるものは大人向けの楽しみだが、見せ方はブランドとして整理される。

これは、DMM側にもFANZA側にもメリットがあったはずだ。

DMMは一般向け企業として見せやすくなる。
FANZAは成人向けユーザーに向けて、より専門的な導線を作りやすくなる。

企業の表玄関と、夜の売り場を分けた。
その結果、DMMとFANZAは同じ歴史を持ちながら、別の顔を持つようになった。

現在のDMMとFANZAはどう違うのか

現在のDMMは、かなり幅広い事業を抱えている。

動画配信。
電子書籍。
ゲーム。
金融。
英会話。
通販。
オンラインサロン。
医療周辺。
アニメ。
AI関連。

一方でFANZAは、18歳以上向けの成人向けエンタメに特化したブランドとして展開されている。

成人向け動画。
同人。
電子書籍。
ゲーム。
ライブチャット。
通販。

この分け方は、かなり合理的だ。

DMMは一般向けの巨大ネット企業として、日常のいろいろな場面に入り込む。
FANZAは成人向けの巨大売り場として、大人の欲望をまとめて受け止める。

昔のDMM.R18時代は、DMMという大きな建物の中に成人向けコーナーがある印象だった。
今は、DMMという昼の街と、FANZAという夜の街が並んでいる感じに近い。

そしてFANZAは、昔のビデオ店の棚を現代風に進化させた場所でもある。

昔は、棚の前を歩きながら作品を探した。
今は、ジャンル、ランキング、セール、レビュー、女優、メーカー、関連作品から探す。

昔は、パッケージを手に取るのに少し勇気がいった。
今は、画面の中でこっそり選べる。

昔は、店の在庫がすべてだった。
今は、膨大な作品の中から検索できる。

成人向け売り場は、店の奥からネットの奥へ移った。
FANZAは、その到達点のひとつと言える。

FANZA公式サイトはこちら

DMMのすごさは「欲望を売り場に変える力」にある

DMMのすごさは、アダルトを扱ったことそのものではない。

人間の欲望を見つけ、それをネット上の売り場に変える力にある。

見たい。
読みたい。
遊びたい。
学びたい。
稼ぎたい。
得したい。
こっそり楽しみたい。
人に言いにくいものを、人に見られずに手に入れたい。

DMMは、このあたりの需要をかなり早く、かなり広く拾ってきた。

成人向けビデオは、その中でも特に強い入口だった。
需要が濃い。
継続性がある。
店頭では買いにくい。
でもネットなら買いやすい。
配信ならすぐ見られる。

この構造をつかんだことが、DMMの成長を支えた。

その後、DMMは一般向けサービスを増やしていく。
動画、電子書籍、ゲーム、金融、英会話、医療周辺、AI。
ジャンルは違っても、根っこには「人が欲しがるものを、ネット上で買いやすくする」という共通点がある。

DMMは、平成のビデオ棚から始まり、令和の巨大デジタルマーケットへ変わった会社だ。

その歴史をたどると、インターネットがただ便利になっただけではないことが見えてくる。
人に見せにくい欲望まで、きっちり画面の中へ入っていったのだ。

参考リンク

DMM公式サイト
https://www.dmm.com/

DMM企業情報
https://dmm-corp.com/company/

DMM沿革
https://dmm-corp.com/company/history/

DMM社内メディアによるDMMの歴史記事
https://inside.dmm.com/articles/DMM_rekishi1/

DMM.comが成人向け事業を分割したことに関する報道
https://av.watch.impress.co.jp/docs/news/1107677.html

DMM.R18からFANZAへの名称変更に関するリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000003114.000002581.html

FANZA開始に関するデジタルコマース側リリース
https://www.value-press.com/pressrelease/205695

FANZA公式サイト
https://www.dmm.co.jp/top/

あとがき

DMMとは何なのか。

この問いに一言で答えるのは、けっこう難しい。
アダルトから伸びた会社と言えば雑すぎる。IT企業と言えばきれいすぎる。エンタメ企業と言えば狭すぎる。何でも屋と言えば当たっているようで、少し乱暴でもある。

ただ、ひとつ言えるのは、DMMは人間が本当に欲しがるものを、かなり早い段階からネットの売り場に変えてきた会社だということだ。

人目を気にせず映像を選びたい。
家から出ずに買いたい。
暇な時間に遊びたい。
学びたい。
稼ぎたい。
こっそり楽しみたい。

そういう、きれいな言葉だけでは片づかない欲望を、DMMは商売に変えてきた。

そして2018年、成人向けの顔はFANZAという名前で切り分けられた。
DMMは昼の巨大ネット企業として広がり、FANZAは夜の成人向けエンタメブランドとして残った。

昔のビデオ店の棚は、もう街角からかなり姿を消した。
けれど、その棚に並んでいた欲望は、形を変えて今もネットの奥に生きている。

DMMとFANZAの歴史は、その変化をかなり濃く映している。
地方のビデオ店から、成人向けビデオの流通へ。
通販からネット配信へ。
DMM.R18からFANZAへ。

平成のビデオ棚は、令和のデジタルな夜へ移った。
その流れをたどると、インターネットが飲み込んできたものの大きさが、妙に生々しく見えてくる。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

CONTENTS