大学のテニスサークルと聞いて、どんなイメージを思い浮かべるだろうか。
爽やかなスポーツサークル。男女でラリーを楽しみ、合宿やイベントで青春を満喫する場所。そんな明るい印象を持つ人も多いはずだ。
ただ一方で、特に昭和から平成の空気を知っている世代には、もう少し生々しいイメージもつきまとう。
「テニサーって、女の子にはちょっと危ない感じあったよね」
ナンパ、飲み会、インカレ、合宿、先輩後輩の上下関係。場合によっては、いわゆる「ヤリサー」に近い扱いまでされることもあった。
では、あのイメージはどこまで本当だったのか。昭和のころに語られていた「危ないテニサー」は、令和の今も同じように存在しているのか。
今回は、昭和・平成・令和をまたいでテニスサークル文化を振り返りつつ、実際に起きた事件や時代背景も交えながら、テニサーの現在地を掘り下げてみたい。
昭和のテニスサークルは、なぜあれほど特別だったのか

昭和の大学生文化を語るうえで、テニスサークルはかなり特別な存在だった。
今の感覚では、テニスはあくまで数あるスポーツのひとつにすぎない。だが1970年代から80年代にかけては、単なる競技以上の意味を持っていた。
背景には『エースをねらえ!』のヒットや、テニスをおしゃれなスポーツとして見る時代の空気がある。ラケットを抱え、白やパステル系のウェアを着て、男女でコートに集まる。その光景自体が若者文化の一部だった。
当時のテニスは、スポーツであり、ファッションであり、社交の場でもあった。単に球を打つ場所ではなく、大学生活の華やかな入口として機能していたわけだ。
迷路亭愛昭和のテニサーって、ただの運動サークルじゃなかったんだね。青春の雰囲気そのものって感じ。
女子大生が大量に集まるサークルだった
昭和のテニスサークルが特異だった理由のひとつが、女子学生の参加率の高さだ。
1980年前後には、多くの女子学生がテニスサークルへ所属していたという記録が残っている。つまりテニサーは「男ばかりの場」でも「女ばかりの場」でもなく、男女が自然に大量に混ざる場だった。
これが他のサークルにはない独特の魅力であり、後に語られる危うさの土台にもなっていく。
テニスそのものより「男女の交流装置」として強かった
テニスは初心者でも入りやすく、男女で一緒に活動しやすい。ダブルスもあるし、真剣な試合をしなくてもラリーだけで成り立つ。活動後に食事や飲み会へ流れやすく、合宿も組みやすい。インカレ化との相性もいい。
要するに昭和のテニスサークルは、テニスをする場であると同時に、大学生同士が出会い、つながり、遊ぶための完成度の高い仕組みでもあった。
この時点で、のちに「爽やか」と「危うさ」の両方を背負う下地ができていたと言っていい。
なぜテニサーは「危険なサークル」と言われるようになったのか


もちろん、すべてのテニスサークルが危険だったわけではない。真面目に活動していた団体も多いし、普通に青春を楽しんでいただけの学生も大勢いた。
ただし、テニサーには危うくなりやすい条件がいくつも重なっていた。
- 男女比が比較的バランスよく、恋愛や性的な空気が生まれやすい
- インカレ化しやすく、責任の所在が曖昧になりやすい
- 合宿や旅行イベントが多い
- 大人数の飲み会文化が定着しやすい
- 先輩後輩の上下関係がノリや飲酒を断りにくくする
こうした条件が重なると、テニスそのものよりも、飲み会中心のサークル、出会い中心のサークルへ変質しやすくなる。
そこからさらに悪化すると、俗に言うヤリサーや、飲酒事故を起こす危険な団体に近づいていく。



テニスが危ないっていうより、テニスサークルって形式が遊びと飲み会にすごく流れやすかったんだね。
「ヤリサー」と「危険サークル」は完全には同じではない
ここは少し分けて考えた方がいい。
サークル内で恋愛が多い、男女関係が盛ん、そうしただけならまだ「大学生らしい遊び」の範囲に収まる場合もある。
だが、無理な飲酒、断りにくい上下関係、泥酔した相手に対する性的な接触となると話は別だ。問題なのは「奔放そうに見えること」ではなく、同意が曖昧になる状況や、断れない空気をサークル全体で作ってしまうことにある。
そして平成に入ると、その危うさは実際の事件や事故として表に出るようになる。
平成のテニスサークル事件簿


平成のテニスサークル史を振り返ると、何度も浮かび上がるキーワードがある。
それは飲酒だ。
テニサーの危険性を語るうえで、もっとも分かりやすく、そして深刻だったのは酒にまつわる事故だった。
2007年 テニスサークル飲み会で19歳学生が死亡
2007年には、大学のテニスサークルの飲み会後、19歳の男子学生が急性アルコール中毒で死亡した事案があった。
焼酎のペットボトルを回し飲みし、掛け声や手拍子であおるような飲ませ方が行われていたとされる。酔いつぶれて呼吸状態がおかしくなっても、すぐに救急要請されなかったことも大きな問題だった。
単純に一人が飲みすぎたというより、危険な飲ませ方がサークル文化として定着していたことが見えてくる。
2012年 立教大学テニスサークル合宿で死亡事故
2012年には、立教大学のテニスサークル春合宿で、20歳の男子学生が飲酒後に死亡する事故が起きた。
合宿には学生やOBら多数が参加しており、学生は飲酒後に何度も嘔吐。翌朝、布団の中で吐しゃ物を喉に詰まらせた状態で発見された。
テニサーの合宿という、一見するとよくある大学イベントの裏側で、命に関わるほど危険な飲酒が行われていたことになる。
2014年 明治大学「クライス」集団昏倒騒動
平成のテニスサークル事件で、もっとも強烈に世間へ刻まれたのはこの件かもしれない。
2014年、新宿・歌舞伎町で若い女性たちが路上に倒れている写真がSNSで拡散され、大きな騒動となった。
関係していたのは、明治大学の公認テニスサークル「クライステニスクラブ」を含む学生たちの懇親会だった。
当時ネットでは、酒以外の薬物や睡眠薬が混入されたのではないかという憶測も広がったが、大学側の説明では、最終的に原因は過度の飲酒で、警察の聞き取りでも事件性は確認されなかったとされている。
ただし、未成年飲酒や過度な飲酒が常態化していた点は重く、サークルは廃部処分となった。



昔からの「テニサーってなんか怖い」イメージを、世間に決定づけた事件のひとつかもね。
2017年 近畿大学の非公認テニスサークルで飲酒死亡事故
2017年には、近畿大学の非公認テニスサークルで20歳の男子学生が飲酒後に死亡している。
大学の検証報告では、学生はビールの後にウォッカを大量に飲み、短時間で意識を失った。にもかかわらず救急車はすぐ呼ばれず、別の学生宅へ運ばれ、翌朝には呼吸していない状態だった。
さらに印象的なのは、このサークルには酔いつぶれた人の介抱や処理を担当する役まであったことだ。つまり泥酔者が出ること自体が前提になっていた。
ここまで来ると、もう偶然の事故というより、危険な飲酒文化がシステムとして組み込まれていたと見るしかない。
テニサーの何が危なかったのか 本質はテニスではなく「構造」だった


ここまでの話を読むと、「やはりテニスサークルは危険」と言いたくなるかもしれない。
だが、少し冷静に見ると、本質は競技名そのものではない。
危険だったのは、テニスというスポーツではなく、大人数・男女混合・インカレ・合宿・飲み会・上下関係が重なりやすいサークル構造の方だ。
同じような問題は、他の運動系サークルや一部の文化系団体でも起こりうる。たまたまテニスサークルは、その条件を満たしやすかった。
だからこそ、「昔のテニサー=危ない」というイメージは、ある意味では的を射ていながら、別の意味では少し雑でもある。
危険なのはラケットではない。問題は、そのサークルがどういう運営をしていたかだ。
令和のテニスサークルはどうなったのか


では令和の今、テニスサークルはどうなったのか。
結論から言えば、テニスサークル自体は普通に残っている。大学の公式案内を見ると、今でも公認のテニスサークルは多数存在しているし、インカレ型の団体も消えていない。
つまり「テニサー文化」そのものが絶滅したわけではない。
ただし、昔と同じ見方では危険を見抜けない
一方で、令和の大学では、飲酒事故や新歓トラブルへの警戒が昔よりずっと強くなっている。
公認団体の管理は厳しくなり、大学側も非公認インカレや、SNS経由の怪しい新歓イベントへ注意喚起を行うようになった。
つまり昭和や平成のころのように、「テニスサークルだから危ない」と雑に見分ける時代ではなくなっている。
今はむしろ、競技名ではなく、その団体の運営実態を見た方が早い。
- 大学公認か、非公認か
- 責任者や所属大学が明確か
- 活動内容より飲み会やイベントばかりを推していないか
- SNSだけで雑に勧誘していないか
- 断りにくいノリや上下関係が強くないか
- お酒を飲まない選択が尊重されるか



令和は「テニサーが危ない」じゃなくて、「中身の怪しいサークルが危ない」に変わった感じか。
それでも、飲み会と性被害の問題は終わっていない
とはいえ、安心しきれる話でもない。
大学生の飲み会、サークル活動、先輩後輩の関係の中で、性被害やハラスメントが起きるリスクそのものは今も消えていない。
令和になると、昔のように露骨な「テニサーっぽさ」は薄れても、SNSでの勧誘や、大学と無関係な交流会、非公認団体のイベントなど、別の形で見えにくくなっている面もある。
そう考えると、現代の危険は昭和よりむしろ判別しにくい。看板だけでは分からないぶん、表面上は普通に見える団体ほど見抜きにくいこともある。
結局、令和の今もテニサーは危険なのか


ここまで昭和から令和まで見てきたうえで、結局テニスサークルは今も危険なのか。
もちろん、テニサーに入ったら必ず危険な目に遭うなんて話ではない。真面目にテニスを楽しんでいるサークルはいくらでもあるし、大学側の飲酒やハラスメントへの対応も昔より厳しくなっている。
ただ、それでも私はテニスそのものに興味がない若い女性なら、わざわざテニスサークルへ近づく必要はないと思う。
友達を作りたい、大学生活を楽しみたい、恋人が欲しい。そのくらいなら、選択肢は他にも山ほどある。
しかも大学によっては、テニスサークルとは別に体育会の硬式庭球部やテニス部がある。サークルにも競技志向の団体はあるので「部活=本気、サークル=遊び」とは言えないが、本当にテニスをやりたい学生にはテニサー以外の選択肢もある。
逆に言えば、テニスには大して興味がないのにテニスサークルへ入る場合、目的の中心は最初からテニス以外にあることも珍しくない。
それが友達作りでも恋愛でも別に悪くはない。大学のサークルなんて、そういう交流も含めて楽しむ場所だ。
ただしテニサーには昔から、男女混合、インカレ、合宿、飲み会、先輩後輩と、男女関係や酒のトラブルにつながりやすい条件が揃っていた。そして平成には、実際に死亡事故や集団昏倒騒動まで起きている。
令和になったからといって、その条件が全部消えたわけではない。
だからテニスが好きなら入ればいい。初心者でも、本当にやってみたいなら自分に合ったサークルを探せばいい。
だがテニスには興味がなく、「なんとなく楽しそう」「新歓が派手だった」「先輩に誘われた」程度なら、昔からテニサーが何度も問題を起こしてきた歴史くらいは知っておいた方がいい。
無駄に危ない目に遭いたくない。酒を無理に飲みたくない。ましてや大学デビューの勢いで無駄に経験人数まで増やしたいわけでもない。
そういう女性なら、わざわざテニスに興味もないのにテニサーへ飛び込む必要はないだろう。
テニスがしたいなら部活に入ってラケットを握ればいい。
そうでもないのにテニサーへ飛び込んだ結果…
握らされるものがラケットだけで済むとは限らない
酒瓶だったり、もっと別の棒状の何かだったり。
昭和から続くテニサーの下世話な評判は、令和になった今も完全な昔話にはなっていない。



テニスやりたいなら全然いいと思う。でもテニスに興味ないのにテニサー入りたいって言われたら、「何しに行くの?」とは思っちゃうよね。



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